中年時の婚姻状態がその後の認知症リスクを決める
2009年 07月 10日
逆に言えば、中年時に、未婚、死別・離別などで一人の場合、認知症リスクが増加することとなる。
Association between mid-life marital status and cognitive function in later life: population based cohort study
Published 2 July 2009, doi:10.1136/bmj.b2462
Cite this as: BMJ 2009;339:b2462
中年(平均50.4歳)でパートナーのいる人は他のカテゴリー(独身、離別、死別)に比べて、後年、65-79歳での認知機能低下が緩徐
死別・離別の人々は、婚姻状態・同棲状態の人々に比べ、3倍のリスク
中年・高年死別者は、婚姻・同棲状態者に比較して、アルツハイマー病 オッズ比が7.67(1.6-40.0)
アルツハイマー病最高リスクは apolipoprotein E e4-alleleキャリアで、中年以前に相手を失い、現状も離別・死別継続状態の人である。
中年のいくつかの補正変数にてもこの相関は不変
機序はなにか?ディスカッション・・・
”Beyond the brain reserve hypothesis”:様々な知的・社会的活動性が認知症防止のためやくだつと報告されている。故に、婚姻状態もその一環とすれば驚くべき事ではないのかもしれない。婚姻状態に起因する知的刺激特性があれば、brain reserve hypothesisとして説明がつくのかもしれない(へそくりやエロ画像をいかに隠すかは・・・知的刺激になる?)。
より注意深い解析では幾分違う解釈もなりたつ。もし婚姻生活期間と認知症リスクが逆相関になれば、婚姻そのものが予防法となるが、オッズ比は、死別後のひとに多い。死別のまま再婚しない方が認知症リスクは再婚例より低いことなどもその反証となる。
認知機能以外に、婚姻・同棲状態が関わるリスク要因は、高血圧、高コレステロール血症、肥満、社会的非活動性、喫煙状態が関連する。うつに関しては、長期前向き研究が少なく、結論づけられない状況。今回の検討では、これらは、補正されている。
”Reverse causation”:中年・高年の”social engagement"(社会とのつながり)がもとものとの予備的原因となり得るという仮説も論じられている。臨床下・症候下の状況が認知症診断前に9年にさかのぼれることから、婚姻状態に影響を与えることは十分考えられる。
”sociogenetic vulnerability”(社会遺伝的認知症リスク脆弱性)モデルという、apoリポたんぱくE ε4のalleleを念頭に置いたモデルに関しても議論している。
エディトリアルには、プライマリケアレベルでの結婚状態への配慮と、公衆衛生的には未婚状態の人への精神的予防的介入が議論されている。
by internalmedicine | 2009-07-10 10:42 | 精神・認知