多環芳香族炭化水素(PAH)出生前環境曝露がIQ低下をもたらす

Polycyclic Aromatic Hydrocarbon:多環芳香族炭化水素って聞き慣れないのだが?

Prenatal Airborne Polycyclic Aromatic Hydrocarbon Exposure and Child IQ at Age 5 Years
PEDIATRICS (doi:10.1542/peds.2008-3506)

母のインテリジェンス、家庭内世話環境、環境的喫煙暴露、他の関連寄与因子補正後、PAH値(中央値2.26 ng/m3超)でフルスケールIQと逆相関(=0.007)、言語的IQ(P=.003)スコアとも逆相関
高暴露群の子供はフルスケール・言語IQスコアは、低暴露(≤2.26 ng/m3)に比べ、4.31、4.67ポイント低下している。
対数変換、継続、PAH値とIQ測定の相関は有意であった(フルスケール IQ: β = –3.00; P = .009; verbal IQ: β = –3.53; P = .002)


Polycyclic Aromatic Hydrocarbon:多環芳香族炭化水素ってなんだ?

多環芳香族炭化水素は,その英語名 Polycyclic Aromatic Hydrocarbon から研究者の間ではPAHとよばれています。PAHは6角のベンゼン環を2個以上持つ化合物の総称で,ベンゼン環2個からなるナフタレン,3個のアントラセンおよびフェナントレン,4個のピレン等がその代表です。環境中でよく検出されるのは,6環位までです。・・・。PAHは原油に含まれていますので,灯油,軽油,重油等の石油製品にも入っております。含有率は多くても10%前後と比較的少ないのですが,これが原油タンカーの事故や貯蔵タンクからのオイル漏れ事故が生じた際には環境を広範囲に汚染するため,問題になります。また,発生源として無視できないのが,工場,給油スタンド,自動車等から流れ出る少量のオイルです。よく川や下水道で油膜を見ることがありますが,チリも積もれば山となりますので,これらの影響も見逃すことはできません。湖沼や海洋では,モーターボートや他の船舶から出る油が,水の他に岸辺の土や水底の堆積物(底質およびセディメントとも言う)を汚染しています。以上は油による直接の汚染ですので,注意すればかなりの割合で防止することが可能です。しかし,この他にもPAHを多く出し,防止する事が非常に難しいものがあります。それはエンジンに由来するPAHです。石油製品を燃焼して動力を得るエンジンでは,どうしても一部で不完全燃焼が起こり,これがPAHを発生させてしまいます。特にPAH発生量の多いのがディーゼルエンジンで,ほとんどのPAHが黒煙と共に大気中に放出されます。最新のディーゼル自動車ではエンジンが改良され,黒煙発生量の少ないものが多くなってきていますが,改良前の車や整備不良の車が,大気,道路,沿道の土壌等の PAH汚染源となっていることは否めません。また,船舶も同じくディーゼルエンジンを使用していますので,湖沼や海洋をPAHで汚染していると言えます。その他にも,・・・各種燃焼機器,焼却場,航空機等からもPAHが発生しますが,量的には前者程多くはありません。
http://www.aist.go.jp/NIRE/publica/news-2000/2000-11-2.htm

by internalmedicine | 2009-07-23 17:22 | 精神・認知  

<< 重症患者迅速挿管補助:麻薬指定... 心不全患者のHbA1cコントロ... >>