喘息患者の呼吸苦馴化システム:島皮質insular cortexの活動抑制メカニズム

喘息患者、特に近似致死的喘息、入院歴などのある患者など重症度が高いほど、その重症度の知覚に乏しいということが知られている。一時期、(いまは知識者然としている)櫻井良子などがさわいでいた“ベロテック健康被害”問題などは、この知覚が鈍化しているための受診チャンス逸脱(This observation that most patients with near-fatal asthma have blunted perception of dyspnea (POD) suggests that a dysfunction in these defense mechanisms may play a role in near-fatal asthma. )とが最大の理由であると断定したい。

では、なぜ、喘息患者に対する呼吸苦知覚の鈍化が起きるか?

効果ある薬剤・管理方法がなかった時代において苦しむ喘息患者たちに、神が与えてくれたありがたいシステムだったのかもしれない。


Down-Regulation of Insular Cortex Responses to Dyspnea and Pain in Asthma
American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine Vol 180. pp. 232-238, (2009)<【序文】 喘息の主要兆候は呼吸苦であるが、正確な知覚把握が治療開始にとって大事。しかし、喘息患者における脳の呼吸苦知覚メカニズムは不明である。

【目的】 To study brain mechanisms of dyspnea in asthma.

【方法】喘息と正常対照者比較の実験的な呼吸苦誘発による、MRI画像化ニューロン反応比較
この脳の活動性を疼痛による誘発ニューロン反応と比較し、類似不快生理的感覚へのニューロン全般化過程として検討した。

【測定・結果】14名の軽症・中等症喘息14名とマッチ化した14名の対照をスキャナーに横たわる間に軽度呼吸苦、重度呼吸苦、軽度疼痛、重度疼痛を与える。
呼吸苦は制限負荷呼吸により、熱疼痛を拙速thermodeで与える。

両感覚の感覚強度は患者・対照に同じく与えたが、近く歳が、ミラー化されて島皮質insular cortex活動性減少として観察された。しかし、periaqueductal gray (PAG) の活動性は、呼吸苦・疼痛共に増加。
Connectivity analyses により喘息特異的なinsular cortexのdown-regulationが呼吸苦・疼痛時に見られ、PAG活動性増加により修正されていると考えられる。

【結論】 この結果から、喘息患者の呼吸苦・疼痛知覚間PAG活動性によるinsular cortexへdown-regulationが見られる。
喘息患者の呼吸苦不快差を減弱するためのニューロン馴化メカニズムをあらわすのだろう。
そして、これは他の不快な、生理的感覚にも一般化された減少となる。

by internalmedicine | 2009-07-25 09:05 | 呼吸器系  

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