卒中後の複合性局所疼痛症候群I型に対するミラー治療

肩手症候群は脳卒中片麻痺患者の約12~30%に合併すると言われており,いわゆる反射性交感神経性ジストロフィー(RSD)として知られている。世界疼痛学会ではRSDはComplex Regional Pain Syndrome type 1(CRPS1)と定義されており,カウザルギーは神経損傷を有するCRPS type 2として位置づけられている。CRPS1は脳卒中後や外傷,時に誘因なく発生する有痛性の障害で診断・治療ともに難しい病態である。

参考:http://www.jstage.jst.go.jp/article/rika/23/1/61/_pdf/-char/ja/



疼痛、感覚障害(e.g., 皮膚を軽くなぜるだけで痛みを生じる[allodynia])、運動障害(3.g., 筋力低下)、交感神経機能障害(3.g., 浮腫)
この症候群の痛みは、固有知覚フィードバックと運動活動のmismatchによるものであり、不適切な固有知覚フィードバックへの視覚フィードバックの代理に視覚フィードバックを用いることで疼痛を減少させる可能性を報告(Neurology 2003;61:1707-1715.、Proc Biol Sci 1996;263:377-386.

視覚フィードバックはミラー治療により行われ、これは、phantom pain(幻肢痛)治療が起源で、この治療法を、CRPS1に用いることは未だ議論ありだった


ランダムに24名の患者を3つの群(健常側イメージを鏡に見せる:active-mirror群、カバーした鏡を見せる群、精神的なイメージのトレーニングを受けたmental-imagery群)に分けた。
active-mirror群とカバーmirror群では、近位側から遠位側へcardinalに、30分患側肢を動かす
アウトカムは運動時の疼痛により測定
プライマリエンドポイントは、4週後の疼痛重症度で、VAS(0-100mm)
セカンダリエンドポイントは、4週後のWolf motor-function試験、brush誘発allodynia、浮腫

active mirror群で、疼痛強度有意に改善
運動機能、allodynia、浮腫も改善

Mirror Therapy for Chronic Complex Regional Pain Syndrome Type 1 and Stroke
N Engl J Med. Vol. 361:(6) 634-636 August 6, 2009




Mirror therapyは、鏡に映る健常側四肢の動きを、鏡に映る健常側四肢のようにイメージする訓練で、Rnamachandranらが、切断者の残存肢の鏡像を見せることで幻肢痛が軽減した(Ramachandran VS, Rogers-Ramachandran D. Synaesthesia in phantom limbs induced with mirrors. Proc Biol Sci 1996;263:377-386.)ことから始まっている(http://naosite.lb.nagasaki-u.ac.jp/dspace/bitstream/10069/18766/1/hoken20_1_9.pdf)。

by internalmedicine | 2009-08-06 14:21 | 運動系  

<< 豊かな国は「少子化」克服、日本... 性ホルモン結合グロブリン遺伝子... >>