【市場原理至上主義への反証】 非営利施設の方が営利施設より、ケアの質が高い!

営利(for-profit)と非営利(not-for-profit) 医療・介護・福祉にとってどちらが望ましいかは、一括して判断は難しいだろう。だが、平均的には、ナーシングホーム、日本で言えば老人保健施設では、営利vs非営利くらべると、非営利施設の方が質の高いケアを提供していた。

Quality of care in for-profit and not-for-profit nursing homes: systematic review and meta-analysis
BMJ 2009;339:b2732 (Published )【目的】 営利・非営利ナーシングホームにてケアの質を比較したもの

【デザイン】 営利 vs 非営利ナーシングホームでのケアの質を調査した観察研究・ランダム亜k対照トライアルのシステミックレビューとメタアナリシス

【結果】 包括的検索で8827を引用、うち956をフルテキストレビューとして適切と判断。参入クライテリアとして合致する82の文献の特性と結果を要約化、最頻回報告質測定のされた4つの報告をプール化。
検討研究にて1965-2003年のデータの結果を報告したもの。
40研究で、すべての統計学的に有意な(P<0.05)比較は、非営利施設方が良好。
3つの研究で、営利施設がすべてで統計学的に良好であった。
残りの研究は合致した結論に満たずであった。

メタ・アナリシスにて、4つの最頻回報告質測定のうち二つの報告で、非営利施設は営利施設より質が高いケアを提供し、より質の高いスタッフ(ratio of effect 1.11, 95% 信頼区間 1.07 ~ 1.14, P<0.001)であり、褥瘡頻度が少ないこと (オッズ比 0.91, 95% confidence interval 0.83 ~ 0.98, P=0.02)が示唆された。

統計学的に非有意な結果では、非営利性施設が、ほかの2つの頻回報告測定においても良好であった。すなわち、非身体抑制使用(odds ratio 0.93, 0.82 から 1.05, P=0.25) 、政府規則非遵守数は少なかった (ratio of effect 0.90, 0.78 ~ 1.04, P=0.17)

【結論】 このエビデンスに基づくシステミックレビューやメタアナリシスから、平均的には、非営利ナーシングホームの方が、営利ナーシングホームより質が高いケアを提供していた。
しかし、ここの施設では、多くの要素がこの相関に影響を与える。




営利団体を参入させた介護保険・・・日本でも、営利施設 vs 非営利施設でケアの質を比較してもらいたい。ケアの質を評価する具体例がこの論文には提示されているのだから、比較は簡単なはずだ。

その上で、役人どもは何の根拠もなく、市場原理に基づけば、質の高い、安価なケアができると言い続けていたわけだが・・・・責任をとってもらおうじゃないか!


physical restraint use(身体拘束具使用)について、もちろん、ゼロが望ましいが、現実ゼロにできる状況にあるのか・・・実地的な検討が必要と思う。極端な理想論実現には膨大なる人的コストの増大を伴う。
これに関しても、コストと効果の検討が全くなされていない日本。

by internalmedicine | 2009-08-14 14:49 | くそ役人  

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