高血圧パラドクス:治療は発展したが、未コントロール患者は増えている

The Hypertension Paradox — More Uncontrolled Disease despite Improved Therapy
N Engl. J Med. Vol. 361:(9) 878-887Aug. 27, 2009


高血圧治療は発展したが、多くの患者が治療コントロールされていない・・・というのをここでパラドクスとしてらしい・・・タイトルほどインパクトが無くて少しがっくり。

米国では、コントロール比率は27%→35%と増加したが、過去20年に3700万人から4200万人に高血圧非コントロール患者数は増加とのこと(Chobanian et al.12 、 Cutler et al.

一部引用しておくと
サイアザイド導入以降50年、降圧剤も種類が多くなり、いくつかの臨床トライアルも行われ、クリアカットなベネフィットが示された。悪性高血圧治療、Veterans Administration研究にて、拡張期血圧 115-129 mmHg、後には90-114mmHgでの心血管イベント減少報告などから確立していった。その後プラセボ対照治験が行われ、高齢者のISHでの治療有用性(利尿剤、CCB)、最近では、80歳超でも利尿剤、AEC阻害剤で心血管疾患合併症・死亡率減少が示された。
高圧治療達成による死亡率・合併症減少は印象的で、プラセボ対照トライアルは、卒中を35-40%で、冠動脈疾患は20-25%減少、心不全は50%超減少させ、悪性高血圧はまれなentityとなり、急性高血圧性心不全、出血性卒中は現在まれとなった。
と薬物治療の発達と知見に関して触れている。

そして、ライフスタイル修正に関しては、DASHダイエットの触れている。しかし、心血管疾患アウトカムに関するダイレクトなライフスタイル修正の効果に関する治験の不足に触れ、TOHP Iと TOHP IIは塩分制限ターゲットの研究であり、有意な心血管イベント減少を示した(BMJ 2007;334:885-892)ことを強調。尿中Na-K比は心血管イベントと強い相関をしめす。それはNa尿中排泄量より影響が大きい(Arch Intern Med 2009;169:32-40.)。・・・スポットで尿検査できるので指導の指針としては有望かも・・・



新しいアルゴリズムだそうで・・・
Algorithm for Management of Hypertension.

140-159/90-99 mmHg
Step 1
ライフスタイル修正
・アルコール制限
・DASH食
・運動
・減塩
・体重コントロール

Step 2 単剤治療
・ACE阻害剤
・ARB
・CCB
・利尿剤

Step 3 他種薬剤追加
・ACE阻害剤
・ARB
・β遮断剤
・利尿剤

Step 4 多種3剤
・adherence評価
・用量最適化


高血圧(≧160/100 mmHg)
Step1 多くは、生活スタイル修正+二剤レジメン
・ACE阻害剤
・ARB
・β遮断剤
・CCB
・降圧利尿剤

Step 2 三番目の多種薬剤を追加
・adherence評価
・用量最適化

Step 3 四剤目を追加
・アルコール過剰を評価
・塩分貯留を評価

Step 4 二次性高血圧評価


心血管リスク要因のコントロールはどの段階でも評価

心筋梗塞後:ACE阻害剤、β遮断剤
狭心症:β遮断剤、CCB
心不全:ACE阻害剤、ARB、β遮断剤、利尿剤、aldosterone antagonist
慢性腎不全:ACE阻害剤、ARB
糖尿病:ACE阻害剤、ARB、他
高冠動脈性心疾患リスク:ACE阻害剤、ARB、β遮断剤、CCB、利尿剤



二次性高血圧診断・治療を後回し?・・・にしているのが、気にかかる。95%の本態性高血圧症をまず対象としようとする意向らしい

若年、高齢での突然の血圧増加、重症、不応性血圧なら・・・どうせ2次性高血圧の除外に導かれる?

最近気になるのがこの疾患
 ↓
Renal-Artery Stenosis(N Engl. J Med. Vol. 344:(6) 431-442 Feb. 8, 2001)

by internalmedicine | 2009-08-27 10:29 | 動脈硬化/循環器  

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