膝痛:大腿四頭筋強化運動の重要性、食事+運動療法は効果的?

テレビしか情報源のない人たちはまるで、ヒアルロン酸などが確立した治療法のように誤解をうけるだろう。あのようなコマーシャルの氾濫は、国民の健康に関して、悪影響を与えると思う。本来は、ライフスタイル介入をまず啓発すべきなのに・・・

もともと、ヒアルロン酸などはまだ確立したものでなく、出版バイアス・・・すなわち、効果有るという知見があるものしか報告されないという偏りと、スポンサーにとっての有利な報告があるというのがシステミックレビューなどで明らかなのだ(ヒアルロン酸、グルクロン酸の経口投与吸収について 2009-09-06 )・・・すなわち、テレビCMで印象づけている効能には大いに疑問がつきまとうのである。

膝痛患者への介入の王道は、食事介入と膝筋力強化運動である。

膝運動に関する筋肉、大腿四頭筋強化運動がより重要ではないかという報告である。食事療法と組み合わせた指導が大事だろう。

Effects of dietary intervention and quadriceps strengthening exercises on pain and function in overweight people with knee pain: randomised controlled trial
Claire M Jenkinson, Michael Doherty, Anthony J Avery, Anna Read, Moira A Taylor, Tracey H Sach, Paul Silcocks, Kenneth R Muir
BMJ 2009;339:b3170

【目的】 地域での、過体重・肥満成人に対して、食事介入 or 膝強化運動、あるいは両者が膝痛・膝機能の改善をもたらすか?

【デザイン】 Pragmatic factorial randomised controlled trial.

【セッティング】 Five general practices in Nottingham.

【被験者】 389 men and women aged 45 and over with a body mass index (BMI) of ≥28.0 and self reported knee pain.

【介入】 食事介入+大腿四頭筋強化訓練;食事介入のみ;大腿四頭筋強化訓練のみ;助言冊子のみ(対照)
食事介入は個別化した食事助言で、1日2.5MJ(600 kcal)減らす指導
介入は戸別訪問し年2回行う

【主要アウトカム測定】 プライマリアウトカムは膝痛スコア重症度( Western Ontario McMaster :WOMAC osteoarthritis index) を 6、 12、 24ヶ月後測定
セカンダリアウトカムは、24ヶ月全部でWOMAC膝運動機能とstiffness scoreとSF-36の選択化属性と入院不安・うつ指数

【結果】 289 (74%)の被験者が完遂。

24ヶ月時点で膝運動群は非運動群に比べ有意に膝痛減少(パーセンテージリスク差 11.61, 95% 信頼区間 1.81% ~ 21.41%)。絶対効果サイズ(0.25)は中等度。
膝痛改善(≥30%)のベネフィットを必要とする、NNTは、24ヶ月時点で9(5-55)
膝運動ランダム化された患者では24ヶ月後機能改善(平均差 –3.64, –6.01 ~ –1.27)

食事介入群の非食事介入比較の24ヶ月後の体重減少平均差は2.95 kg (1.44 ~ 4.46)
運動 vs非運動は 0.43 kg (–0.82 ~ 1.68)。体重減少の差は膝痛・膝機能開演と相関せず。しかし、うつの減少には相関
(絶対影響差 0.19).

【結論】 2年間に及ぶ、膝自宅ベースの、自己管理プログラムは、過体重・肥満膝痛患者に対し、有意に膝痛を改善し、膝機能を改善する。
軽度持続的体重減少は食事介入で改善し、うつ減少となるが、疼痛・機能には明らかな影響を与えなかった。



Lifestyle interventions for knee pain in overweight and obese adults aged ≥45: economic evaluation of randomised controlled trial
Garry R Barton, Tracey H Sach, Claire Jenkinson, Michael Doherty, Anthony J Avery, Kenneth R Muir
BMJ 2009;339:b2273
【目的】 4つ異なるライフスタイル介入により膝痛患者のコスト効果を推定

【デザイン】 Cost utility analysis of randomised controlled trial.

【セッティング】 Five general practices in the United Kingdom.

【被験者】 389名の年齢 ≥45で、自己報告に基づく膝痛とBMI≥28を有するものを対象

【介入】 食事介入+大腿四頭筋強化運動、食事介入、大腿四頭筋運動、冊子提供
自宅訪問を2年間継続

【主要アウトカム測定】 2年のIncremental cost per quality adjusted life year (QALY) ;health service perspective.

【結果】 助言冊子は平均差コストで –£31、平均 QALY gain 0.085
強化運動+食事介入はより効果的で、それぞれ0.090 、 0.133 であたが、コスト効果的ではなかった。
食事化に夕+強化運動は平均コスト of £647 で、平均QALY gain は 0.147
これは、冊子提供介入比較で、QALYあたり£10 469のコスト増加と推定。
閾値 £20 000/QALYで、23.1%のコスト効果期待値

【結論】 膝痛患者では、食事介入+強化運動がコスト効果的だが、大きな不確実性を伴う


一時的な除痛治療の繰り返しの介入を行うだけの膝治療というのは、公的保険診療では無くなった方がよいと思う。もしその効能を主張するのであれば、バイアスを疑われない介入治験でしめすべきだろう。

by internalmedicine | 2009-09-11 10:00 | 運動系

 

<< 季節型インフルエンザワクチンに... 低炭水化物ダイエット(アトキン... >>