小児頭部外傷の低リスク評価:不要なCTを減らせ!

外傷性頭部外傷は、子供の死亡原因・障害発生のトップの原因だり、USAでは年間18歳未満で7400名ほど死亡し、6万例の入院、60万のED受診がある。
臨床的に重要な頭部外傷(ciTBI)、特に脳外科手術必要な事例を迅速に選び出す必要がある。CTは外傷脳損傷診断のための標準検査だが、頭部外傷の約50%で行われている。

1995年から2005年にCT使用は倍となり、sらに、急性介入の必要のないのにCTが行われることが多く、疑陽性や非外傷性所見にて新たなコスト増大をもたらしている。

GCSスコア14-15程度の子供での脳外科手術必要性は極めた少ない。
放射線による致命的悪性疾患を引き起こす蓋然性は1000件から5000件に1例で、決してその頻度は少なくない、さらに、若年ほど影響があるということからもCT使用を減らすことはきわめて重要である。

clinically-important traumatic brain injuriesをciTBIと略している。
Identification of children at very low risk of clinically-important brain injuries after head trauma: a prospective cohort study
The Lancet, Volume 374, Issue 9696, Pages 1160 - 1170, 3 October 2009
北アメリカ25のEDにおける、18歳未満の24時間以内GCS14-15の頭部外傷
ciTBI (death from traumatic brain injury, neurosurgery, intubation >24 h, or hospital admission ≥2 nights)除外の雨の年齢特異的推定ルールの評価

42412名の検討(derivation、validationはそれぞれ2歳未満で8502、2216、2歳以上で25283、5411 )


CTスキャン14969(35.3%);ciTBIs 376(0.9%)、脳手術 60(0.1%)


”意識状態正常、前頭部以外の頭蓋血腫認めず、意識消失が全くない・5秒未満の意識障害がない、非重症性の外傷メカニズム、触知頭蓋骨折がない、両親情報に基づく通常の活動性”という、2歳未満の予測ルールは、評価群において、ci TBIのNPV 1176/1176(100.0%, 95% CI 99.7-100.0)というもので、感度 25/25(100%, 86.3-100.0)

2歳未満でのCT画像検査施行患者で、167/694(24.1%)は低リスク群

”意識状態正常、意識消失がない、非重症外傷メカニズム、頭蓋底骨折兆候なし、重症頭痛がない”という2歳以上の予測ルールではNPV 3798/3800 (99.95%, 99.81-99.99)、感度 61/53(95.8%,89.0-99.6)

2歳以上のCT画像検査施行患者で、446/2223(20.1%)は低リスク群

validation populationで脳外科手術を見逃した例はない。


Philip ButtaravoliのMinorEmergenciesにはCT施行基準は、
・成人では
状況・身体診察から、臨床的に重大な頭蓋内損傷が示唆される場合、”明らかな意識消失、健忘、重度頭痛、悪心・嘔吐の持続、脳脊髄液耳漏または鼻漏、鼓膜裏または乳様突起表層部の血液(Battle sign)、錯乱、混迷、昏睡(GCS 14以下)、鎖骨より上の重大な外傷を示す身体所見、神経学的巣症状や兆候などが認めら得る場合としている。
その他、CTオーダー基準は、高齢者(60歳を超えている)、抗凝固剤使用、出血性素因、アルコールや他の薬物乱用、外傷機転の危険性、神経系手術やてんかんの既往など
と書かれている。
・小児では、
”成人状態の異常(GCSもしくは小児GCS 15未満、錯乱が認められる、傾眠会話が反復したり遅くなる)、頭蓋骨骨折の臨床的兆候(陥没骨折が触知、耳介後部の紫斑、眼窩周囲の紫斑、鼓室内出血、脳脊髄液耳漏や鼻漏)、嘔吐の既往または頭痛の訴え、2歳未満では頭皮の血腫”
と書かれている。

故に、2歳未満の記載がpoorで、臨床的pitfallとなっているのだろう。

救急外来では、親御さんたちが、CT撮れ!・・・という、有言・無言の圧力を加える! 事前対策、たとえば、パンフレット作成など行い、説明の練習など必要がある。

by internalmedicine | 2009-10-05 11:07 | 中枢神経  

<< 適応外使用:2年ぶりにちょっと... 新しい抗結核薬の可能性 >>