吸入ステロイドと持続性β刺激剤併用の分子生物学的メカニズム

臨床で頻用され始めると、その作用機序について考察し始めることは少なくなる。

吸入ステロイド(ICS)と持続性のβ刺激薬なんで併用するといいの?

Molecular Mechanisms of Combination Therapy With Inhaled Corticosteroids and Long-Acting β-Agonists
CHEST October 2009 vol. 136 no. 4 1095-1100


β2アゴニストは、glucocorticoid receptor (GR) を刺激し、核内へのtranlocationを促進し、CS関連遺伝子発現促進をもたらす。
構造的な気道上皮細胞である線維芽細胞、平滑筋細胞などは、これらの遺伝子の翻訳は、グルココルチコイド受容体(GR)と、別の翻訳因子であるCCAAT enhancerr-binding protein(C/EBP)-αとのコンプレックスを形成する。喘息患者の気道平滑筋細胞は、C/EBP-αを欠如している。C/EBP-α欠如は、CSsがin vitroで細胞増殖抑制作用を持たないことの説明にされている。そして、このC/EBP-α欠如は、喘息患者の平滑筋bulkの増加の原因ともされている。
β2-アゴニストは、マスト細胞メディエーター放出を抑制するが、この反応は脱感作、CSsが抑制できる過程として説明されている。

CSsは肺内・鼻粘膜ののβ2受容体遺伝子翻訳を増加させる。CSsは、長期β2アゴニスト投与の結果生じるβ2受容体transcription減少効果を減衰する作用を有することとなる。

これらの影響の正確なメカニズムの描写は併用療法の合理性を担保することとなるだろう。



関連:吸入ステロイドのサルメテロール追加の影響:メタアナリシス 2008年 06月 06日

ICS+LABA同時吸入>それぞれの単剤吸入 ・・・ の根拠論文 2007年 05月 07日

by internalmedicine | 2009-10-08 09:10 | 呼吸器系  

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