認知症進行期の臨床経過:感染症・熱性疾患・嚥下問題が主な死因、緩和ケア不十分

Choices, Attitudes, and Strategies for Care of Advanced Dementia at the End-of-Life (CASCADE) 研究からの認知症進行期の臨床経過を前向きにみたもの

結論は、”米国ナーシングホームでの進行期認知症への、緩和的ケアへの対応は不十分で、死因は感染症と嚥下問題が主”、”ナーシングホーム在居認知症進行期の死亡率検討し、6ヶ月で半数以上が死亡し、肺炎、熱性エピソード、食事の問題が死因として多い”という報告


どこの先進国でも、認知症を貴院とする死亡数が増加しているが、どこの国でも死亡・最適な緩和ケアに関する認識が低い。認知症は、癌や動脈硬化性疾患と同じく、誰もが罹患する疾患であり、自分もしくは親戚、知人だれかが罹患する可能性がある。そのリスクに関する認識を持つ必要がある。
また、膨大な社会保障費が費やされており、老人介護施設や病院に行くと、経管栄養・経腸栄養にてほぼ意識無く生かされている多くの人々を目にする。日本では経管・経腸栄養への倫理性、具有するリスクに関する議論が不足している。また、誤嚥や誤飲が訴訟ざたとなり、普段利用者の世話をまったくしない遠くの親戚が・・・騒ぎ出す。

誤嚥や誤飲というのが認知症の自然経過と考えないために生じる無限の直接・間接コスト・・・これがさらに介護・医療の現場を苦しめ、利用者へのケアの質低下をもたらす



The Clinical Course of Advanced Dementia
N Engl. J Med. Vol. 361:(16)1529-1538 Oct. 15, 2009
18ヶ月の期間で、54.8%が死亡
肺炎 41.1%
熱性エピソード:52.5%
食事問題:85.8%


年齢、性、疾患期間補正後、6ヶ月死亡率は、肺炎で46.7%、熱性エピソード44.5%、食事問題 38.6%

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苦悩症状としては、呼吸苦 46.0%、疼痛 39.1%が多い。

終末期3ヶ月にて、40.7%が少なくとも一つの重大な介入、入院・救急室受診・点滴・チューブ栄養などを受けていた。

住居者代理者が予後不良ということ、進行性認知症の合併症という認識をもつ、その居住者たちは、そういう認識を持たない居住者より終末期3ヶ月で重大な介入を行わない(補正オッズ比, 0.12; 95% 信頼区間, 0.04 - 0.37)



米国のナーシングホームといえど、緩和的ケアへの対応は不十分で、死因は感染症と嚥下問題が主ということになる。

認知症進行期の経管栄養問題 2006年 12月 11日で触れたが、”ビタミン不足は重要であるが、低栄養の状態こそ生理学的ホメオスターシスなのである、患者の自立(autonomy)の倫理は、代謝の側面からも考慮されるべき”と論じた。

経管栄養は、食べたくないものへの食事の強制となり、患者のAutonomy侵害は真正面から日本で議論されるべき問題である。

身体拘束にはうるさい人たち(元官僚の大学教授などが代表)が強制的経管栄養・経腸栄養には寛容なのは謎である。

by internalmedicine | 2009-10-15 09:48 | 精神・認知  

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