不眠診療

度重なる、睡眠薬による犯罪に、不眠治療への世間の風当たり強くなってる。

ハルシオンがなぜ頻用されるか・・下記ガイドラインを見ると、薬物第一選択は”Short/intermediate-acting BzRAs(zaleplon, zolpidem, eszopiclone, triazolam, and temazepam) or ramelteon”で、そのうち日本で入手できるのは、マイスリーとハルシオンだけ。zaleplonやramelteonは睡眠遷延化減少し、waking after sleep onset (WASO)の影響も少ない・・・毎度おなじみの日本厚労省役人さんたちののろい仕事ぶり。

どのような薬剤でも、悪意をもって処方を受けようとする患者がいれば、それを妨げることは困難。なら、本来、その目的である、不眠治療の王道である、基礎疾患、病型、治療プロトコールの明瞭化で、悪意ある入手に対抗するしかないだろう。診療報酬次第で、現実的でない認知行動療法が現実的になれば・・・この流れも変わるのかもしれない。安直に処方できないように、睡眠薬処方時の問診票・病歴聴取義務化なども一案と思う。・・・主な担当科は、精神科打と思うが・・・動かなければプライマリケア関連学会が動けばよいと思う。

そもそも、アルコールのtriazolam(ハルシオン)の薬物動態への影響は少なく、アルコールと眠剤の相加的効果のみ(Int Clin Psychopharmacol. 1990 Apr;5 Suppl 2:115-30.)なのである。


慢性不眠症の臨床ガイドライン
Clinical Guideline for the Evaluation and Management of Chronic Insomnia in Adults
J Clin Sleep Med. 2008 October 15; 4(5): 487–504.

Diagnosis and treatment of insomnia.
Am J Health Syst Pharm. 2008 May 15;65(10):927-34.


睡眠治療のゴール:睡眠の質・時間の改善、不眠にともなう昼間の障害の改善、たとえば、エネルギー・注意・記憶困難、認知機能障害、疲労、身体的症状の改善

Common Cognitive and Behavioral Therapies for Chronic Insomnia
Stimulus control (Standard)
Relaxation training (Standard)
Cognitive Behavioral Therapy for Insomnia or CBT-I (Standard)
Multicomponent therapy [without cognitive therapy] (Guideline)
Sleep restriction (Guideline)
Paradoxical intention (Guideline)
Biofeedback therapy (Guideline)
Sleep hygiene therapy (No recommendation)


”Sleep hygiene therapy”は非推奨となっている。

診断:不眠記載、ストレッサー議論、病歴聴取
2週間ほど睡眠日誌を書くよう求め、心理試験、血液検査、他の検査を行い、原因除外を行う
もし、他の睡眠障害が疑われれば、ポリソムノグラフィーを推奨する

治療は、基礎疾患を除外し、あるいは、基礎疾患に注目し、不眠治療を、認知行動療法を通常行い
特定ケースでは薬物治療を行う
不眠治療オプションについて多くを熟読せよ


初期評価には、睡眠病歴、詳細な医療病歴、薬剤、心理的病歴が含まれ、不眠愁訴、睡眠前の状態、睡眠覚醒パターン、他の睡眠関連症状、昼間の合併症問診を含み、不眠のタイプ・評価、関与因子、合併薬物、ドラッグ、精神状態などの評価を含むべきで、評価・鑑別診断、自己問診、在宅睡眠記録、症状チェックリスト、心理的スクリーニング試験、ベッドパートナー問診を含むべき・・・ということなのだが・・・以下の日医雑誌の診療てびきにはそれが必要十分に含まれるか?



Non-benzodiazepines:cyclopyrrolones、imidazopyridines、pyrazopyrimidines
Benzodiazepines:estazolam, temazepam, triazolam, flurazepam
MelatoninReceptor Antagonists ramelteon
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2576317/table/T12/


特定のBzRAsは薬物動態的に異なるだけだが、GABA特異的なのより比較的より選択的であるものもある。短期作動BzRASに関して多数のRCTが行われているが、より長期の有効性を示した対照化トライアル数は少ない
BzRAsの副作用として、residual sedation、記憶・パフォーマンス障害、睡眠中異常行動、身体化症状、薬剤相互作用である。薬剤処方数の多くは抗うつ薬や抗けいれん薬を含むoff-label処方である。適用外処方の有効性安全性は確立してない。抗ヒスタミン、メラトニン、valerianを含むnon-prescription drugs and naturopathic agent治療も用いられているが、安全性・有効性エビデンスは限定的。



心理的要因を契機として発症する代表的な不眠症である.発症機制に,①不眠への過度な不安や緊張が身体化され,筋緊張の亢進,予期不安として現れ,覚醒度の高い状態が持続する,②学習された睡眠を妨げる連想がみられる,の2 点が考えられている.患者は眠れないことを過度に気にするため不眠への恐怖が生じ,慢性的に身体化された不安がさらに一層不眠を増強するという悪循環が形成され,不眠が持続する.有病率は一般人口の1~2% と推定される.
睡眠障害の診断と治療 日本医師会雑誌  2008



睡眠衛生に基づく問診と,PSQI(Pittsburgh sleep quality index ), ESS ( Epworth sleepiness scale),睡眠日誌(1~2 週間)を施行し,不眠症以外の睡眠障害を除外する.
睡眠障害の診断と治療 日本医師会雑誌  2008

1.不眠症鑑別診断の手順
(1)不眠を主訴とする患者に対して,睡眠衛生に基づく問診と,PSQI(Pittsburgh sleep quality index ), ESS ( Epworth sleepiness scale),睡眠日誌(1~2 週間)を施行し,不眠症以外の睡眠障害を除外する.睡眠呼吸障害あるいは睡眠関連運動障害に留意し,これらが疑われれば睡眠医療専門機関へ終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)を依頼する.また,不眠症と睡眠呼吸障害あるいは睡眠関連運動障害の並存例や,不眠症から睡眠薬あるいはアルコール依存性睡眠障害への移行例など,複雑な病態が想定
される場合には,睡眠医療専門機関へ紹介する.

(2)各不眠症の鑑別は,基本的にICSD-2 の下位分類に準拠して行う.
①適応障害性不眠症→②不適切な睡眠衛生→③身体疾患に伴う不眠→④薬物もしくは物質による不眠症→⑤精神疾患に伴う不眠症→⑥精神生理性不眠症

(3)精神疾患に伴う不眠症として,うつ病性障害の鑑別が最も重要である.うつ病性障害が疑われる場合には,精神科医療機関へ紹介する.
① ICSD-2 には,不眠症診断に際して鑑別すべき精神科的障害として,気分障害の重要性が明記されている.
②プライマリケアにおいてうつ病性障害をスクリーニングする際には,2 項目質問紙法5)が簡便で使用しやすい.
日本医師会編:自殺予防マニュアル第2 版―地域医療を担う医師へのうつ状態・うつ病の早期発見と対応の指針.明石書店,東京,2008.
睡眠障害の診断と治療 日本医師会雑誌  2008





1 ICSD-2における不眠症の全般基準
A.睡眠の質や維持に関する訴えがある
B.訴えは適切な睡眠環境下において生じている
C.以下の日中の機能障害が最低1つ認められる
1)倦怠感あるいは不定愁訴
2)集中力,注意,記憶の障害
3)社会的機能の低下
4)気分の障害あるいは焦燥感
5)日中の眠気
6)動機,意欲の障害
7)仕事中,運転中のミスや事故の危険
8)睡眠不足に伴う緊張,頭痛,消化器症状
9)睡眠に関する不安
(American Academy of Sleep Medicine : ICSD-2. 2005)
睡眠障害の診断と治療 日本医師会雑誌  2008


不眠症(insomnia)
1.Adjustment insomnia(acute insomnia):適応障害性不眠症
2.Psychophysiological insomnia:精神生理性不眠症
3.Paradoxical insomnia:逆説性不眠症
4.Idiopathic insomnia:特発性不眠症
5.Insomnia due to mental disorder:精神疾患に伴う不眠症
6.Inadequate sleep hygiene:不適切な睡眠衛生
7.Behavioral insomnia of childhood:小児期の行動的不眠
8.Insomnia due to drug or substance:薬物もしくは物質による不眠症
9.Insomnia due to medical condition:身体疾患に伴う不眠
10.Insomnia not due to substance or known physiologic
condition,unspecified(nonorganic insomnia)
11.Physiologic(organic)insomnia, unspecified
(American Academy of Sleep Medicine : ICSD-2. 2005)
睡眠障害の診断と治療 日本医師会雑誌  2008


2.
不眠症治療の手順
(1)睡眠衛生指導の徹底を前提として,必要に応じて適切な薬物療法を施行する.適切な薬物療法とは,BZPの眠前単剤常用量投与を指す.
(2)薬物療法の実際―睡眠薬の使用上の注意.
①作用特性(半減期・受容体選択性)および副作用に関する知識を習得.
② BZP の多剤併用より,抗うつ薬の使用(変更あるいは併用)を考慮.
③アルコールとの併用禁止.
④高齢者に対する慎重投与.
睡眠障害の診断と治療 日本医師会雑誌  2008

by internalmedicine | 2009-11-09 11:11 | 精神・認知  

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