BMJ否定的論旨の解説:ニューラミニデース阻害剤:インフルエンザ予防・治療
2009年 12月 09日
一文を一部訳すと、
検査確認インフルエンザ暴露後効果に対して効果確認。だが、インフルエンザ様症状の構成要素少ない場合は有効でない。ニューラミニデース阻害剤は季節性インフルエンザ症状減少に対するオプショナルな治療法と考えられる。データ品質のよい研究に乏しいため、インフルエンザの合併症予防に関しては決定的なエビデンスはない。未知の部分に対して独立したランダム化研究が必要だろうと報告されている。
bmj.comは、パンデミックインフルエンザ健康成人へのoseltamivirの使用に関して支持するデータの問題を明らかにすべく、Deborash Cohenは、Cochraneのレビューアーたちのステップを再トレースし、transparencyへのcommittmentに疑念があるとした。Peter Doshiは、この薬剤の公衆衛生的ベネフィットのエビデンスは微小である(Neuraminidase inhibitors—the story behind the Cochrane review BMJ 2009;339:b5164)とのべている。エディトリアル(BMJ 2009;339:b5351,)の著者Fiona GodleeとMike Clarkeは薬剤トライアルのすべてのデータを学会で検討すべく公開すべきと述べている。
要するに、効果がとぼしいというエビデンスではなく、効果のエビデンスが乏しいと・・・言ってるのである。
結論は・・
ニューラミニデース阻害剤は、インフルエンザの症状に対して軽度効果。薬剤は検査確認インフルエンザに対して暴露後効果的だが、インフルエンザ症状の乏しい例では有効とは言えない。
ニューラミニデース阻害剤は、季節型インフルエンザ症状軽減に関してオプショナルと考えるべき
高品質のデータが不足しインフルエンザ合併症予防に関しては決定的ではない。
ランダム化トライアルにてこの未解決な部分を解明する必要がある。
Neuraminidase inhibitors for preventing and treating influenza in healthy adults: systematic review and meta-analysis
BMJ 2009;339:b5106, doi: 10.1136/bmj.b5106 (Published 8 December 2009)
20トライアルを含む検討で、4つが予防、12が治療、4つが暴露後予防
・予防として、ニューラミニデース阻害剤はインフルエンザ症状・無症状インフルエンザに対して効果はない
・症状ありの検査確認インフルエンザに対しての有効性は、75mg/日で、61%(リスク比 0.39、95%信頼区間 0.18-0.85)、150mg/日で73%(0.27, 0.11-0.67)
吸入zanamivir 10mg/日は62%(0.38、0.17-0.85)
・oseltamivir暴露後予防効果は58%(95% 信頼区間 15%-79%)と84%(49%ー95%)と家庭内2つのトライアル。Zanamivir も同様のパフォーマンス。
・インフルエンザ様書状改善ハザード比は、治療優位性;oseltamivir 1.20(95%信頼区間 1.06-1.35)、znamivirは1.24(1.13-1.36)
・合併に関する8つの未出版研究は不適切でないとされ、除外された。
・残りのエビデンスとして、oseltamivirはインフルエンザ関連かき道感染合併症を減少を示せない (リスク比 0.55, 95% 信頼区間 0.22 - 1.35)
・エビデンスから、oseltamivirは吐き気を誘発 (オッズ比 1.79, 95% 信頼区間 1.10 to 2.93).
・pharmacovigilance からのまれな副事象は研究の質が悪いか、under-reportと推定される。
Effect of neuraminidase inhibitors compared with placebo on prophylaxis against influenza-like illness
Effect of neuraminidase inhibitors compared with placebo on prophylaxis against laboratory confirmed influenza
Effect of neuraminidase inhibitors compared with placebo on alleviation of influenza symptoms (intention to treat analysis)
Effect of oseltamivir compared with placebo on complications (including pneumonia, bronchitis, or "other lower respiratory tract infections") requiring antibiotics in laboratory confirmed influenza, based on study by Kaiser et al10 and three other studies (complications included pneumonia, bronchitis, otitis media, and sinusitis).24 31 33 Unpublished studies were excluded
Effect of oseltamivir compared with placebo on nausea (intention to treat analysis)
ワクチン供給の遅れとその有効性ももちろん未だ確立してない以上、ニューラミニデース阻害剤を、パンデミック・インフルエンザH1N1の治療戦略の主役とせざる得ない現状・・・最初から、否定的態度をとるってのはどうなのだろうと考える。
だが、一方、健保制度で守られている日本の抗ウィルス薬主体の戦略は世界的に見れば恵まれすぎており、耐性形成を考えれば他国にとっては脅威となるのかもしれない。
”検査確定の上”ってのも問題で、この”検査”は必ずしも、”迅速検査キット”による診断でないことにも注意が必要である。・・・感度の低い”迅速検査”の話と間違えれば、診断治療見逃しが多くなるだろう。
by internalmedicine | 2009-12-09 08:45 | インフルエンザ