子癇前症と関連する抗血管増殖因子sFlt-1と甲状腺機能低下の関係
2009年 12月 11日
これが、子癇前症と強く関連し、さらに、甲状腺機能低下をももたらすという・・・話
子癇前症と胎盤性と考えられるSoluble fms-like tyrosine kinase 1 (sFlt-1) の関係に、甲状腺機能低下のリスクの関係
ノルウェーのNord-Trondelag Health Study or HUNT-2ベースの研究
141名Calcium for Pre-eclampsia Prevention trial被験者で、甲状腺機能とヒトhgonadotrophin、可溶性fms様tyrosine kinase 1濃度測定
soluble fms-like tyrosine kinase 1 (sFlt-1 or sVEGFR1) が子癇前症の臨床的phenotypeに関して関連があることが様々示唆されている。正常妊娠の最終2ヶ月で増加し、子癇前症でかなり増加する。
これは、血管内皮grwoth factor、胎盤成長シグナルを抑制する。実際、ガンへの血管内皮増殖因子抑制剤使用にて高血圧、蛋白尿、腎臓糸球体血管内皮障害、肝酵素増加、脳浮腫、可逆性の後頭葉eucoencephalopathyを生じるという報告があり、この機序と一致する。
最近このvascular endothelial growth factor inhibitorsの使用による甲状腺機能低下のリスク増加の報告がなされ、soluble fms-like tyrosine kinase 1のような血管内皮増殖因子阻害剤のマウスモデルの実験により、甲状腺毛細血管の退縮、TSHの濃度増加を示した。
故に、子癇前症での過剰なfms-like tyrosine kinase 1過剰により、甲状腺機能低下をもたらすのではないかと仮説をたて確認
Pre-eclampsia, soluble fms-like tyrosine kinase 1, and the risk of reduced thyroid function: nested case-control and population based study
Richard J Levine, Lars J Vatten, Gary L Horowitz, Cong Qian, Pal R Romundstad, Kai F Yu, Anthony N Hollenberg, Alf I Hellevik, Bjorn O Asvold, S Ananth Karumanchi
BMJ 2009;339:b4336 (Published )
Calcium for Pre-eclampsia Prevention cohortの分娩前サンプルにて、TSH値は2.42倍ベースラインより超過し、対照の1.48倍増加
分娩前・対照比は1.64(95%信頼区間 1.29-2.08)
fT3は子癇前症患者では対照より減少 (症例比 0.96, 95% 信頼区間 0.92 ~ 0.99)
分娩前サンプルでは、TSHホルモンが参照値を超えており、対照よりその頻度が多かった(補正オッズ比 2.2, 95% 信頼区間l 1.1 ~ 4.4) 。
子癇前症、正常血圧対照群ともに、TSH濃度はベースライン・分娩前サンプルとも増加し、これは分娩前のsoluble fms-like tyrosine kinase 1と強く相関 (P for trend 0.002 and <0.001)
Nord-Trondelag Health Studyでは子癇前症既往女性の初回妊娠女性は、他より参照値超過TSH濃度(>3.5 mIU/l)比率が高い (補正オッズ比 1.7, 95% 信頼区間 1.1 ~ 2.5)
特に、TSH高濃度・thyroid peroxidase抗体を有さない場合が多い (補正オッズ比 2.6, 95% 信頼区間 1.3 to 5.0)、このことは、自己免疫機転のない甲状腺機能低下であることを示唆する。
この関連は特に、子癇前症が初回・2回目妊娠ともに生じたときに強い (5.8, 1.3 ~ 25.5)。
胎盤性の soluble fms-like tyrosine kinase 1 (sFlt1) が、子癇前症の子宮内膜機能障害、高血圧、蛋白尿と関連していることが明らかであった(J Clin Invest. 2003 March 1; 111(5): 649–658. )。
純粋に、勉強になった・・・このメカニズム・・・となると、このメカニズム子癇前症の予防治療開発につながるのでは?
by internalmedicine | 2009-12-11 10:05 | 医学