手術前の投薬によりリスクの高い人はβ遮断剤を使わなければならないのだが、まもってる医師は非常に少ない

開業すると周術期と関連することはないのですが、この分野はβ遮断剤が主役のようで、日本ではどうなんでしょうか、米国では高リスクのひとはβ遮断剤をつかうべきとガイドラインで決まってますが、守っていないようです。

Manganoらの報告で,β1選択性のアテノロールを術前~術後に使うことで、術後720日の生存率改善が得られたと述べている。こうした結果から欧米では,術前の評価で高リスクと判断された例には,β遮断薬を使用することが有用との認識が広まりつつある。近年,高リスク例には手術の約 3 週間前から経口β遮断薬を投与し,術中には血行動態をみて必要に応じてβ遮断薬を静注,術後はまた経口剤を使うという方法で,周術期の心臓合併症を予防できたという報告が多い。”といわれてます。

ただ、Guidelineに記載されているように、RCTは少ないようで、どちらかというとこれはconsensus-basedのようです。
ガイドラインというだけでは米国でもあまり守られてないようです。
ガイドラインに書かれてると訴訟で負けるのが怖いから、マニュアル的に米国の医師は従うのではないかと思っていたのですが、意外です。それとも周知が足りないのでしょうか?

Lack of Physician Concordance With Guidelines on the Perioperative Use ofβ-Blockers
Arch Intern Med. 2004;164:664-667.
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ACP(American College of Physicians)では周術期のβ遮断剤使用が手術後のア
ウトカムを向上させる。医師の判断がガイドラインや推奨された医療を尊重しβ
遮断剤を心筋梗塞後の患者に使用が不十分かどうかの研究。後顧的に胆嚢摘出術(開腹)を施行された成人患者4年分を調査。CADの病歴、2つ以上のリスク(高血圧、糖尿病、高コレステロール血症、現在の喫煙)を調査
336例の胆摘術後のうちβ遮断剤のクライテリアに合致した146名(緊急でなく、β遮断剤の禁忌でもない)存在。123名が医学的評価がなされ、44名(33%)が入院前にβ遮断剤投与を受けていた。β遮断剤投与を入院時うけていない102名の患者のうち、94(92%)が術前にβ遮断剤投与を受けていなかった。β遮断剤の投与は心臓専門医により評価された18名のうち4名(22%)、非専門医で評価された47名中3名(6%)のみ
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ACC/AHA Guideline Update on Perioperative Cardiovascular Evaluation for Noncardiac Surgery
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非心臓手術前に周術期心臓合併症予防のため薬物療法をするRCTはまだ少なく、
確固たる結論や推奨を導き出すほどのデータはない。・・・・
現在の研究では、適切に投与されたβブロッカーは周術期虚血を予防し、ハイリスク患者のMIや死亡リスクを減少させることが示唆されている。
可能なら、β遮断剤を待期的手術前数日から数週間開始し、心拍が50-60/分に到達するよう調節すべき
α2アゴニストで周術期治療をした場合も心筋虚血、MI、心臓死などへ同様の効果がある。明らかに今後解明されるべき分野である。
:カタプレスって使ったことがないのですが、リバウンドがくるなど使いにくい薬だったイメージがあるのですが・・・
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周術期薬物療法のRecommendation
Class I.
β遮断剤が狭心症や有症状性の不整脈や高血圧の患者に必要
血管手術施行予定で術前の虚の所見のある心リスクの高い患者

Class IIa.
β遮断剤:術前の評価で発見した未治療高血圧患者、冠動脈患者、majorな冠動脈疾患リスク

Class IIb.
α2アゴニスト:高血圧の手術コントロール、既知のCAD、majorなCADリスク要因

Class III.
β遮断剤:禁忌
α2アゴニスト:禁忌
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ところで、日本のように圧倒的にhospital volumeが小さい場合、周術期などは
裁量権なども圧倒的に外科医がもつようです。術直前に麻酔科が関与するくらい
で、このへんのインパクトはどの程度なのでしょう。

最近、当方で見つけた肺ガン患者も、COPD+喘息(吸入ステロイド+持続性β2刺激剤にて可逆性あり)、糖尿病、慢性心房細動(ワーファリン投与INRコントロール患者)も、外科の先生が今でも自分の手から手放さないようで、さぞかし、スーパー外科医なのでしょう。

テレビなどをみると華やかな外科医が圧倒的で、確かに、勉強する外科医は中途半端な内科系専門医よりはるかに優れていることが多いようです。内科は外科医が術場に入っている間により患者のそばに行き、そして論文など勉強をすべきなのです。

私の専門とする呼吸器などもあまり進歩はないといっても、1年前とはやはりずいぶん考え方も変わり、抗生剤一つでも概念すら変わろうとしております。内科医を兼用できるスーパー外科医が存在できる余裕がほんとにあるのでしょうか?
術前評価くらい、各専門医、とくに心肺機能評価くらいは専門家がいれば専門家にまかせるべきではないかとかんがえるのですが・・
半分、愚痴

by internalmedicine | 2004-03-23 12:08 | 動脈硬化/循環器  

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