メトホルミンと乳酸アシドーシスの関連に疑念・・・日本では過剰な使用差し控えがあるのでは?
2010年 01月 25日
http://www.jds.or.jp/jds_or_jp0/uploads/photos/830.pdf
お目通し下さい。
その上で・・・
メトホルミンに関して、最近、騒がしくなってきている
・メトホルミン製剤のヨード造影剤との併用に関する「使用上の注意」の改訂」に関するごたごた(www.toaeiyo.co.jp/iryou_kankeisya/tyuui.../o-0907med_1.pdf )
・輸入「メトグルコ錠剤」を大日本住友から発売し、メルビンと当面併売するという・・・実に不思議な状況
(www.ds-pharma.co.jp/news/pdf/ne20100120-2.pdf)
メトグルコⓇでは、単独での薬剤療法が可能であり、既存のメトホルミン製剤の1日最大用量750mgに対して、1日維持用量として750~1500mg、1日最大用量として2250mgの投与が、また、食後投与に加えて食直前投与も可能・・・安い薬価なためか大日本住友が国内自社製品適応拡大のための投資と見合わなかったのだろう・・・と想像。輸入品採用のほうが早かったということか・・・メルビンは実に不幸な薬剤であった。
さて、メトホルミンがほんとに、乳酸アシドーシスと直接関連があるのだろうか?
おもしろい記事がMedscapeに解説されていた。
Is Metformin Associated With Lactic Acidosis?
From Medscape Pharmacists > Ask the Experts Jodi H. Walker, BS, PharmD Authors and Disclosures Posted: 01/19/2010
(日本以外では)2型糖尿病において、Metforminはもっとも処方される薬剤の一つで、末梢でのブドウ糖取り込み・利用を促進し、肝臓のブドウ糖新生を現法させる。 ピルビン酸脱水素酵素活性を減少させ、ミトコンドリアの薬剤輸送を減少させ、嫌気的代謝を促進し、 tricarboxylic acid cycle precursorの産生増加となる。ピルビン酸脱水素酵素阻害は、嫌気的代謝のprecursorのchannelingを減少させ、ピルビン酸の乳酸への代謝を結果的に更新させ、乳酸産生促進となる。
正常人機能患者では、乳酸過剰産生は、腎臓で排泄される。しかし、腎機能障害患者では、メトフォルミンと乳酸が効果的に排泄されず、結果、両方が蓄積する。乳酸アシドーシスは重症で、致命的となる可能性がある。(http://www.medscape.com/medline/abstract/14633764)
乳酸アシドーシスとメトホルミンの関係は議論がある。
Cochrane Systematic Review では、200トライアルで、メトホルミン vs 非メトホルミン治療で、10万対 5.1 vs 5.8という頻度で、乳酸アシドーシスのリスク増加と関連無かった(Salpeter SR, Greyber E, Pasternak GA, Salpeter EE. Risk of fatal and nonfatal lactic acidosis with metformin use in type 2 diabetes mellitus. Cochrane Database Syst Rev. 2006;1:CD002967.)。
nested, case-controlled analysisによる、メトホルミンとSU剤比較 50,048名対象で、10万患者対 メトホルミン 3.3 vs SU剤 4.8。乳酸アシドーシス発症患者全員が、乳酸アシドーシスのリスク要因のある人たちだった(Metformin, sulfonylureas, or other antidiabetes drugs and the risk of lactic acidosis or hypoglycemia: a nested case-control analysis. Diabetes Care. 2008;31:2086-2091. )。乳酸アシドーシスのリスク要因は、産生過剰と除去抑制要素であり、うっ血性心不全、肝障害、ショック、アルコール使用、低酸素状態、腎不全、敗血症、加齢である。
メトホルミン自体は、乳酸アシドーシスのリスク増加させないようである。メトホルミン使用が増えても乳酸アシドーシスは増加していない(Hamnvik OP, McMahon GT. Balancing risk and benefit with oral hypoglycemic drugs. Mt Sinai J Med. 2009;76:234-243.)。
加えて、SU剤単独でも乳酸アシドーシスリスク増加させることもなさそうである。故に、基礎疾患・病態、併用が個々のリスクを増加させるようだ。
糖尿病患者では、乳酸アシドーシスは、薬剤特異的問題より他の要素が関連しており、真の増加リスクは未知なのである。
by internalmedicine | 2010-01-25 10:32 | 糖尿病・肥満