2005年 08月 30日 ( 3 )

 

朝日新聞に見られるアスベスト中皮腫報道のいい加減さ

世間では朝日新聞の記者が、取材をせずに、捏造記事を作り上げたとのことが話題になっているが、私ども医者から見れば、以前から、新聞記事なんてほとんど、嘘ばっかり・・・かれらに、科学的良心があるのか検定をおこないたいくらいだ・・・

以前、10週類も薬を元気な患者に出しているなどと、取材もせずに印象だけで世論欄を書いていることを批判した。現実を無視して批評だけに終始し、机上の空論だけで世を惑わし続ける・・・それを信用する読者が一番問題なのだろうが、彼らを決して優秀な指導者などと思ってはならない。

さて、アスベストという・・・今、かなりナーバスな問題を朝日新聞がその偏向的な観点から、科学的常識を無視して記事にしている。これにより、また、朝日により、世の読者、為政者さえだまされてつづけるのだろうか。・・・・決してこういうことは放置していてはならないと思う。


では、本題・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


問題の工場からの距離から中皮腫死亡率が通常より高いため、「まだ最終結果ではないが、中皮腫の原因がクボタだと疑うには十分なデータだ」との報道がなされている
“半径500m内、中皮腫死亡率は9.5倍 クボタ旧工場”(朝日新聞:http://www.asahi.com/special/asbestos/OSK200508270059.html

朝日新聞の記事なので、証拠能力が低い(といっても他の新聞も一緒だろうが・・・)と思われる。そして、疫学的な手法にしてはかなり乱暴な気がする。

“クボタが毒性の強い青石綿を使っていた時期(57~75年)に注目し、この間、クボタから半径1キロ以内には延べ6万人、500メートル以内には1万5000人が居住していたなどと推計。中皮腫の発症まで30年前後とされることから、死亡者36人のうち00年以降に亡くなった22人について、人口比の中皮腫死亡率を算出した。

 その結果、年間14万人に1人(03年度)とされる全国平均と比べ、500メートル以内では9.5倍、500メートル~1キロでは4.7倍、1~1.5キロでは2.2倍にのぼることがわかったという。 ”

この文面統計学的に意味のある事なのであろうか? ちょっと計算してみた。

情報源が産業疫学の専門家だろうから、間違いないはずなのだが・・・


<目的>
500メートル以内の住人が9.5倍というのがはたして本当に統計学的に意味があることなの
<手順>
これは、14万人に1人ということで、ポワソン分布に従うと仮定する
(参考:http://aoki2.si.gunma-u.ac.jp/lecture/Bunpu/poisson.html


1年のあいだにある人が中皮腫に成る確率 p はきわめて小さい。

p = / 140000

 また,この対象とする人口は大きいので,確率はポアソン分布に従うと考えられる

 ポアソン分布のパラメータ λ は,

λ = n p =15000×( 1 / 140000 )×9.5=1.0178

となる。

 (http://aoki2.si.gunma-u.ac.jp/lecture/Bunpu/poisson.htmlの( 1 ))式より,求める確率は f ( 0 ) = 0.3613839597 となる

簡単に言えば、10回くじをひけばあたりが3-4回でる確率・・・これでは、これが偶然にというより、さほどまれならず生じる確率だといえる程度のものである。これくらいの頻度で間違って関連があるよと結論づけられることがありますということ・・・>これが天下の朝日新聞の記者は理解ができないらしい。


これがポアソン分布に従い、蓋然性が5%未満である確率となるときは、λ=3のとき、28名以上の患者発生、すなわち、全国のほぼ28倍以上のなら統計学的に有意差であると証明ができたのだが、この場合は5%の有意差を持ってすれば、差がないという帰無仮説は棄却できない。


統計学的には意味のない記事であるにもかかわらず、それを朝日は9.5倍も・・・と確たる事実かの如く、記事にしているのである。


統計の専門家が述べているとのことだが、この専門家のレベルが相当低いか、もしくは、取材源を理解せず、あるいは、理解しようとせず、く有意差検定などの話を無視して、結果だけを仰々しく、センセーショナリズムとともに吠え立てるのではないか。

おそらく私たちのマスコミとの接触の経験だと後者が正しい。9.5倍という事実とそれが正しい(あるいは誤りである)確率の問題は別であるということを、おそらく高学歴であるが、統計学を知らない・無視する記者は比率や倍率だけを報道するということを知っている(細木数子が売らないが統計学だといいながら統計学の用語を全く使わないどころか、概念自体を理解してないのと同じレベルだろう)

新聞記事というのは所詮この程度のものなのだろう。・・・これを、読者は知らなければならない。


また、この疫学専門家は、この新聞記事が行政に利用されることを想定しているのであれば、どこか、批判を受ける場、学会などで、その研究方法などの批判を受けたうえで、この報道に関する弁明をしなければならないだろう。それが科学者としての責務と思われる。
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そもそも、中皮腫という診断に同一の診断基準がなされているのかという疑問が残る。
電顕レベルや組織化学的に診断したものと、プラークがあるから診断したもの、アスベスト吸入歴から診断したものなどばらつきがあるだろう。


現に被害の可能性があるのなら、国の責任としては、その蓋然性による損失分は保証する必要はあるだろう。しかし・・・過剰な報道は、被害者にとっても結果的にマイナスとなるであろう。
日本だけでなく国際的にもこの問題はもちあがっており、そのうち国際的なコンセンサスが得られるであろうから、日本だけが特異的なエビデンスということはありえないのであり、真実がどこにあるかは、報道でなく、科学的事実がそのベースとなる。

by internalmedicine | 2005-08-30 16:39 | 呼吸器系  

アスベスト環境曝露による中皮腫リスクは確立しているのか?




アスベストの問題というのは、報道する側は素人で、問題が整理されていなくて、肺癌、中皮腫、胸膜病変、アスベストという塵肺など混乱があるようである。
報道では職業的暴露だけでなく、環境暴露まで確立したことかのように報道されてます。


現在、確立しているのは・・・・としらべるのなら


フリーでアクセスできる論文は・・・
http://ajrccm.atsjournals.org/cgi/reprint/157/5/1666.pdf


胸膜関係は・・・
http://www.chestjournal.org/cgi/content/full/125/3/1103


喫煙との関連性はかなり高いにもかかわらず、喫煙問題はマスコミではふれられてない。嫌煙活動家のように、JTの陰謀とまでは思わないが、巨大スポンサーに反するのメリットを報道機関は見いだせないで居るのだろう。

たとえば、アスベストと肺ガンの関連性

            非喫煙者  喫煙者
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アスベスト曝露歴無し    1       11
重度アスベスト曝露     5       53
chrysotile miners    7       25
(Peto & Doll, 1985)
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これなどは、喫煙の影響を報道することはない。


話を、環境暴露と中皮腫の関係にもどすと・・・・

EPAでも環境曝露と中皮腫の関係の記載は少ない
http://www.epa.gov/iris/subst/0371.htm
自然のアスベストの多いトルコのある地域では、胸膜中皮腫の発生頻度が水、フィールド、ストリートのアスベスト繊維の存在と関連があるという報告(Baris et al., 1979).




http://www-cie.iarc.fr/htdocs/monographs/suppl7/asbestos.html

アスベスト労働者の自宅やアスベスト鉱山や工場の周囲の冠溝曝露はいくつかのケースで注目されている[ref: 1,2,4-6,9,11,25,26]. 非職業性曝露はUSAで生じる中皮腫の1/3が非職業性曝露とおもわれる[ref: 27]
イスラエルの研究では、中皮腫の頻度は、USAやヨーロッパに比べて極めて高い[ref: 9].
中皮腫は環境曝露に非常に関連アルトしている研究がある[ref: 66,67].
パイプ水道管曝露に関する3つの相関研究と1つの症例対照研究[ref: 68-71]では、どのタイプの癌のリスク増加も一定の結果が見られなかった。しかし、他の研究では[ref: 72]、chrysotileに関し、他の癌ではなかったが腹膜・胃癌の増加を示唆する所見が、どの年齢でもみられた。
tremoliteやactinoliteは少数ながら、vermiculite発掘、鉱山[ref: 97,98] 、環境曝露[ref: 99]での研究がある。ほぼ6倍のリスク比である。
中皮腫死亡は職業研究で見出されているが、環境曝露ではリスク増加を見出していない、胸膜プラークでは報告はある。環境曝露の中皮腫に関する1つの文献[ref: 31]でtremoliteが疫学的に重要と報告されている。



Mesothelioma: Risk Apportionment Among Asbestos Exposure Sources
http://www.blackwell-synergy.com/doi/abs/10.1111/j.1539-6924.2005.00643.x
Risk Analysis Volume 0 Issue 0 - August 2005 doi:10.1111/j.1539-6924.2005.00643.x
USにおける中皮腫の流行、2000-20004年で、1971年OSHA(Occupational Safety and Health Administration)による高レベルアスベスト曝露までたどることができる。疾患原因を中皮腫と診断された患者の多くがトラストや法廷制度によって補償を求める請求をおこなっている。中皮腫の個々人はアスベスト曝露として典型的であり、アスベスト工場の1つ以上で暴露されている。
寄与因子としての中皮腫のリスクに従って補償をまかなう・・・


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アスベスト環境曝露に関する論文は、マスコミが騒ぐわりには、論文レベルではまだはっきりしていないといえるのではなかろうか?

by internalmedicine | 2005-08-30 16:37 | 呼吸器系  

鎮痛剤は骨折の治癒を遅らせるか?

・・・・結論:不明らしい

Do non-steroidal anti-inflammatory drugs cause a delay in fracture healing?
Clarke and Lecky Emerg Med J.2005; 22: 652-653.
http://emj.bmjjournals.com/cgi/content/abstract/22/9/652-a
514の論文で、調べてところ、骨折治癒への副作用に関する理論的な関心があるが、臨床的に十分な証拠はない。


Bondierには、NSAIDが骨折治癒抑制は疑われるものの、喫煙では圧倒的に悪さをすることがかかれている。
 ↓
少数の症例対照研究では、大腿骨々折治癒を抑制することが、遷延化、が示されているが、この研究では同時に喫煙の影響がかなり大きいことが示されており、もし喫煙を補正するなら結果は違ったものになる可能性がある。
(PV Giannoudis et al. vs. J Bone Joint Surg Br 2000 82: 655-658.)
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流行のようで、このテーマは多く検索できます。




創傷治癒に関しても・・・看護関係の記載で・・・
慢性創傷は炎症細胞を有意にもち、理論的にはその炎症を抑制することとなる。しかし、そのロジックはほんとに論理的なのか?
COX-2阻害剤はこの事に対してどのようにはたらいているのか。
凝固系因子のが動脈壁を鬱ぎ、虚血や組織の梗塞を生じる原因となるとともに、創傷組織治癒にも働く。創傷はしばしば炎症性成分を多く持ち、治癒へ繋がるよう初期から出現する。
COX-2阻害剤の心血管、卒中へリスクを生じる危険性も考え、再考を要する時期である。加えて、慢性炎症に対する抗炎症薬治療を肯定する文献が少ない。

動物モデル:動物モデルでこの治療を良好とするエビデンスを見いだせない

10年前、NSAIDであるibuprofenが褥創予防に役立つことを仮説として、炎症モデルとして炎症を抑制、好中球性の虚血・再潅流障害を減少させ、組織梗塞と関連する状態を改善するという仮説であった。不幸なことに正しくなく、むしろ、治癒促進歯内ばかりか悪化させた。

もう一つの実験は、実験的な大腸吻合ラットを用いたもので、NSAIDにより対照より吻合を弱くした結果となった。さらに、COX-2阻害剤であるrofecoxibで実験したところ、ラットモデルで吻合を促進した。COX-2阻害剤再投与にてこの所見は抑制された。

by internalmedicine | 2005-08-30 14:40 | 医療一般