2006年 05月 22日 ( 2 )

 

臨床研修後の進路

意外に内科・眼科というところも、診療科進路希望としては少なくなったようである。アナウンス効果みたいなのがあるのだろうか?全国医学部長病院長会議は19日に研修後の診療科別の志望を調査発表している。
大学教授の集まりのくせに、分析が甘い、研修といわば医師たちの就職である研修後診療科に関して分離した分析がなされてない。私だったらこの報告書不合格だが、いろんなことが含まれる素データである。


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(朝日新聞H18.5.22 地域によって掲載日異なる可能性有り)

地域的なばらつきと各診療科の傾向が参考になる。


メディファックスのデータだと・・・

卒後臨床研修を今年、修了した医師で出身の大学病院に戻った人は51.2%←72.1%
産婦人科に入局した医師は、2年前と比べて18.5%減、小児科は28.1%減
脳神経外科(42.3%減)
外科(32.8%減)
形成外科(40.9%増)
皮膚科(23.6%増)

地域別では、四国が30.2%(02年74.0%)
東北32.1%(63.1%)
北海道33.1%(76.4%)
中国36.0%(73.1%)

専門委員会の小川委員長は、「過疎地を含む地方の医療の崩壊や、日本の医学・医療・研究の沈滞が危ぐされる。国民福祉の後退につながる重大問題が現実的に出てきた」と危機感をあらわにした。また「調査では命を守る救急医療の志望が減少も明らかになった。日本の医療制度全体の危機」と述べた。



調査を担当した小川教授は
仕事がきつく、しかも生命に直接関わる診療科への希望が減っている」とみている



この傾向は事実であろう。そしてこれは、抜本的解決がなされない限り、後戻りは不可能で深刻な問題と思う。

死が避けられない病態、リスクの高い処置などは、それが社会的に保護されない限り、選択する側が少なくなるのは当たり前。制度が変わらない限り、外科系・小児科・死にかかわる診療科へ進む医師は減少傾向は続くだろう。

朝日新聞は、憲法上の国民の権利である人権剥奪を行いたいらしく、この短い記事でも、初期研修お終えた後の進路は医師の自由選択に任されているといやみったらしく書いている。
(大東亜戦争に導いた新聞社あ国民的を人権無視の方向へ煽るのがうまい・・・あなた2年間過疎医療やってくれと言いたいけれども、そこはいろんな手順が必要なんだろうという大臣発言とリンクした記事だろう:記者クラブ機能発現)



ところで、大学病院の研修は確かに不効率であるし、だれしもそこで研修したがらないという理由は大学で働いたことのある医者はみな実感しているはず・・・


ところで、最終的進路結果は判明しているはずだが、そのデータはだれがもってるんだろう。行政・地域医療、GP的な医療、産業医、保険会社の診査医、フリーター医師だっている。積極的に調べようとすれば調べられるはずなのだが・・この調査自体が専門診療科だけに限ってしまってるので、わからない。
調査発想者は大学病院さえどうにかなればよいという発想で調査されているので分からない。



なぜ、大学が人気がないかは下のデータを見ればわかるだろう・・・その主因は働かない看護師と事務職なのだが・・・



大阪府医師会調査
分析では会員、非会員ともに回答者を49歳以下で区切った。その結果、会員193人、非会員176人の計369人の回答を有効回答として分析した。

 勤務実態の結果では、厚労省が01年に出した「過労死認定基準」である、1カ月当たりおおむね80時間を超える時間外労働(当直を除く)をしている非会員が30.7%いることが判明。会員でも28.0%に上り、性別では男性33.7%、女性18.1%。また「過労死」環境の勤務医は大学病院勤務者では43.9%と4割を超えた。中間値推計の労働時間は64.0時間。

 また、74.0%の勤務医が当直をしており、回数は月1~4回が55.8%と過半数。中央値は4.18回。当直中、45.9%が平均5件以上の患者診療を行い、本来の「電話当番・診回り」(当局が当直として認める業務内容)といった実態とはかけ離れていた。当直明けも94.7%が通常業務に就いていた。



5月23日の記事をみれば・・・上記記事と異なり、現実的には小児科・産科に進む医者は多くなるのかもしれない。大学病院で勤務する小児科・産科は減るかもしれないが、一般病院で働く小児科・産科はさほど減らない?という可能性がある。
 大学病院の先生方の分析は大学病院への勤務希望のものであり、一部。全体像が把握されてない可能性がある。いづれにせよ、
結果的にどの診療科に進んだかを別途調べる必要があり、そのときまで結論づけは難しいかもしれない。
小児科、産科が意外に人気 研修医調査 [ 05月23日 20時29分 ] 共同通信
 重労働のため不人気とされる小児科は、32科中3位、産婦人科も8位と意外に人気-。厚生労働省は23日、新しい医師臨床研修制度の1期生の進路に関する調査結果を公表した。民間病院など市中病院での研修が増えたことを反映し、進路に大学病院を選ぶ人が減少する傾向もみられた。 調査は3月に実施。2004年度から必修化した2年間の臨床研修を今春修了した研修医のうち、2500人の回答を中間報告としてまとめた。
 専門にしたい診療科の希望を決めていたのは2154人。うち内科が1位で14%、外科9%、小児科8%と続き、産婦人科は5%でその7割は女性。小児科と産婦人科を選んだ4人に3人が「やりがいがある」を理由に挙げた。

by internalmedicine | 2006-05-22 14:40 | くそ役人  

急性肺障害:肺動脈モニタリングvs中心静脈圧モニタリング

持続的肺動脈カテーテルによるモニタリングの終焉・・・心不全治療周辺
でもふれてるが、ICU入室中の敗血症、ARDあるは病態の進展した心不全といった患者群で肺動脈カテーテルによる監視に関して厳しい研究結果が得られてる。


論文だけを見れば、PAC治療は不要と判断しそうだが、Editorialなどをみると、勧善懲悪的には行かない。

Pulmonary-Artery versus Central Venous Catheter to Guide Treatment of Acute Lung Injury
The National Heart, Lung, and Blood Institute Acute Respiratory Distress Syndrome (ARDS) Clinical Trials Network
NEJM May 21, 2006 (10.1056/NEJMoa061895)

背景:肺動脈カテーテル(PAC)の利点とリスクい関してのバランスは確立していない。
方法:急性肺障害と診断確定した1000名患者についてランダム化トライアルを行った。PACによるものとCVカテーテル(CVC)ガイドによる血行動態マネージメントの比較
退院前60日間の死亡率をprimary outcomeとする
【結果】
ベースラインは両群同等。死亡率はPACとCVC間で同等(27.4% vs 26.3% P=.69)
(注記:天下のNEJMでもこういう記載をするからなぁ・・・)
絶対的相違 1.1%(95%CI -4.4-6.6%)
人工呼吸不要日数:13.2±0.5 vs 13.5±0.5; P=0.58
ICU日数:(12.0±0.4 vs 12.5±0.5; P=0.40

少なくとも、治験期間中においては、PACガイド治療はショック患者の3つの測定値を改善せず、肺機能・腎機能の有意差もなく、人工呼吸セッティング、透析・昇圧剤使用への影響も与えてない。
水分バランスは両群同様で、輸液・利尿剤指示も同様比率であった。
ドブタミン使用は稀
PAC使用は約2倍のカテーテル関連合併症(主に不整脈)を生じる


Editorialでは、ARDSやうっ血性心不全、術後必ずしもPACは必要ではないが、必要でなくなったというわけではない。重症COPD患者、臨床的に重篤な肺高血圧症、、透析持続の患者はこのトライアルでも除外されていると書かれている。



重症患者でのルート確保というのは、CVラインが多いのだが、関わる医療事故が新聞掲載されることが多くなっている。送検された事例も多いようだが、積極的治療からの更なる撤退ということを現場の医療関係者は希望しているだろう


私の研修時代、集中治療はモニタリング全盛時代で、HurstやBraunwaldといった先生方の著書を読んでいた。
(Braunwaldが今年9月に来日するとのこと非常に楽しみ)
そういう時代はやはり理論優先の時代であり、その後のCost-Benefit studyなどのClinical Evidenceの時代とは異なる時代であったのだろう。
そういえば、大阪で医療訴訟の患者側代表として活躍中の御仁、自分の病院にモニタリングをめいっぱいして、これで医療事故が防げると昔見学者に豪語してたが・・・
モニタリング事態が合併症増加させることがはっきりしたのは、時代の皮肉だろう。

事故や問題が起きたときは、感情の発露は最後に、まず、分析的に原因を包括的に検討し、そして、再現性の確認などを科学的に行い、蓋然性が明瞭となった要因に対し、二度と不幸な転機が生じないように、エビデンスの集積とその対策の周知徹底をはかる・・・それから事故を生じさせた対象者への怠慢行為が有れば社会的にも責任をとらせるという手順をふむべきであろう。福島の問題は、医療事故調査に客観性や科学的分析などが著しく欠損しており、その状態で社会的な責任まで追及されてしまっているのである


Editorialに話は戻るが、
Clinical practice is rarely exclusively dichotomous
臨床の世界では白黒はっきりできることはむしろ稀

という一文がある。このことを、昨今、患者・家族、司法、医師までも、皆忘れているのではないだろうか?・・・メディアに関与する批評家・軽挙妄動医師たちが彼らの浅学のため、多くの視聴者に勧善懲悪的な、たとえば、肺動脈カテーテルすること自体が悪である、金儲けであるのような意見に左右されてしまうのである
メディアにおける医療医学的な情報提供に関して、一方的な情報提供を禁止するというような厳格なガイドライン策定が必要と思われる。

by internalmedicine | 2006-05-22 10:23 | 呼吸器系