2009年 02月 06日 ( 4 )

 

喫煙はワーナー症候群原因蛋白の異常をきたす :肺気腫も老化の一種

eurekalertでは、"American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine." (2月6日の論文)ということになっているのだが、まだ、掲載されてないようだ。(2.7掲載された)

Cigarette Smoke Induces Cellular Senescence via Werner's Syndrome Protein Down-regulation
American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine Vol 179. pp. 279-287, (2009)

早期に老化し13歳ほどで無くなる早老症 (Hutchinson-Gilford syndrome)と異なり、USで20万人に1名で日本ではより多く2万人に1人


Werner's sydrome proteinとして知られる部分の遺伝子の変異
DNA損傷修復の働きをする。
参考:http://grj.umin.jp/grj/werner.htm


喫煙は変異を生じているわけではないが、この蛋白減少を生じるという報告

肺疾患無しの非喫煙者から採取した肺線維芽細胞と、重度喫煙歴患者や重症肺気腫患者から採取した線維芽細胞でしらべたもので、肺気腫・喫煙者からの線維芽細胞はその分裂・増殖能力を欠き、喫煙習慣が細胞の加齢を生じると考察。
細胞はWerner's syndrome protein値が、対照に比べ低下。

先行する論文としては、
Cigarette Smoke Induces Cellular Senescence via Werner's Syndrome Protein Downregulation
Am. J. Respir. Crit. Care Med. 2008, doi:10.1164/rccm.200802-320OC
Werner's Syndromeは、RecQ helicase familyの一メンバーを遺伝子コードするloss-of-function mutationである。Werner症候群と喫煙は加齢を促進するという共通性がある。細胞senescence(老化)とWerner's syndrome protein量を、喫煙のin vitroでの影響をみたところ、肺気腫患者からの肺線維芽細胞はWerner's syndrome proteinの減少が未あれ、senescent phenotypeが認められた。たばこ煙抽出物はWerner's syndrome proteinを培養線維芽細胞・上皮細胞で減少させた。Werner's syndrome protein欠損線維芽細胞はより喫煙誘導細胞老化や細胞migration障害をきたした。
逆に、Werner's syndrome proteinの内因性過剰発現は喫煙の影響を減衰する。

by internalmedicine | 2009-02-06 16:56 | 呼吸器系  

メラトニン・アゴニストの概日リズム障害治療有効性

Medpageに基づくシフト労働・時差による睡眠障害治療薬として有望:Tasimelteon  2008年 12月 02日の元論文

メラトニンそのものは概日リズム関連睡眠障害治療として困難で、 MT1 and MT2 melatonin receptor活性化の方が有望らしいが、”ラメルテオン”(武田)は欧州で治験やり直し


tasimelteonにおいて、人工的睡眠中断を発生させて、効果をみたもの


Melatonin agonist tasimelteon (VEC-162) for transient insomnia after sleep-time shift: two randomised controlled multicentre trials
The Lancet, Volume 373, Issue 9662, Pages 482 - 491, 7 February 2009
【背景】概日リズム睡眠障害は不眠の主な原因。
有効性と生理的メカニズム評価のための第2相試験、tasimelteon(VEC-162)の、睡眠覚醒のシフトによる一過性不眠治療に対する有効性確認のための第3相試験

【方法】2相、3相ともランダム化二重盲検、プラセボ対照、平行群研究
第2相研究:2ヶ所、39名健康者で、tasimelteon( 10 [n=9]、 20 [n=8]、 50 [n=7]、 100 mg [n=7])と placebo (n=8)
7夜モニターし、ベースライン時・3夜、睡眠5時間後3夜を、治療前、スケジュール化
概日リズム相判定のため血中メラトニン濃度測定

第3相試験にて、19の米国のサイトで、睡眠クリニックにて、入眠起床時刻の遅延を誘発した一過性不眠誘導411健康成人
tasimelteon (20 [n=100]、 50 [n=102]、 100 mg [n=106])とプラセボ(n=103)を就寝前30分に投与

事前特異化プライマリefficacyアウトカムはポリソムノグラフィー睡眠満足度(第2相)、持続的睡眠のおくれ(第3相)、概日リズム相シフト(第2相)
解析はITT、安全性を両相で評価
【結果】・第2相試験、tasimelteonは、プラセボに比較して、sleep latencyを減少し、睡眠効率を増加させた。
血中メラトニン濃度の早期シフトは用量依存的であった。
第3相研究において、tasimelteonはsleep latency、sleep efficiency、睡眠後の覚醒(睡眠の持続性)の改善を示した。
副事象頻度はtasimelteonとプラセボ同等
【結果】
睡眠時間の中断後、tasimelteonは睡眠開始と内因性概日リズムのシフトを伴った睡眠維持の改善をみとめた。
Tasimelteonは概日リズム睡眠障害における一過性不眠の治療上の可能性を有する。

by internalmedicine | 2009-02-06 14:20 | 精神・認知  

急性腰痛→即、画像診断の戒め & Red Flagsの重要性


腰痛評価の画像診断は広くなされている。重篤な基礎疾患、癌や感染症、馬尾神経症候群などを示唆する病歴・臨床的特徴(いわゆる、red flags)ない急性腰痛に対して、1994年、AHCPR( Agency for Healthcare Policy and Research )ガイドライン(< ahref="http://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/bv.fcgi?rid=hstat6.chapter.25870. ">http://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/bv.fcgi?rid=hstat6.chapter.25870. )では、急性腰痛初月の画像診断に反対する推奨をだしている。
この推奨は、観察研究に基づくもので、red flagsのない患者における重篤な病態の頻度の少なさ、画像診断と臨床症状の弱い相関、急性腰痛の自然改善の尤度の高さ、画像診断が治療決定ガイドがもたらすエビデンスがないことなどが根拠である。


Imaging strategies for low-back pain: systematic review and meta-analysis
The Lancet, Volume 373, Issue 9662, Pages 463 - 472, 7 February 2009
6つのトライアル(10報告)
• 急性腰痛に対する、速攻レントゲン vs 速攻レントゲン無しの通常ケア(4つのトライアル)
• 即、MRI or CT vs 速攻画像診断せずの通常ケア(1つのトライアル)
• ランダム化して臨床的に必要な場合のみと、全ての患者に速攻MRIの比較(1つのトライアル)


急性腰痛→即、画像診断の戒め & Red Flagsの重要性_a0007242_10215912.jpg



速攻画像診断する診療と、画像診断無しの通常診療とにプライマリアウトカムの差がなかった。

プライマリエンドポイントは、QOL,精神的健康状態、包括的な患者による改善報告(VASベース)、患者満足度である。

・短期(~3ヶ月 標準化平均差 疼痛:0·19, 95% CI −0·01 ~ 0·39 、 機能:0·11, −0·29 to 0·50, ルーチン画像化診療の方がネガティブな価値)

・長期 (6—12 ヶ月, 疼痛:−0·04, −0·15 ~ 0·07  と 機能:0·01, −0·17 ~ 0·19)

他のアウトカムは有意ではない

トライアルの質、画像診断方法の違い、腰痛期間は結果に影響を与えていないが、解析はトライアル数が限られているための限界が存在する。
結果はおおむね急性・亜急性腰痛に対してプライマリケアの状況で評価されている。



red flagsに関しては・・・
・Deyo R, Diehl A. Cancer as a cause of back pain: frequency, clinical presentation, and diagnostic strategies. J Gen Intern Med 1988; 3: 230-238.
・Deyo R, Diehl A. Lumbar spine films in primary care: current use and effects of selective ordering criteria. J Gen Intern Med 1986; 1: 20-25.


Assessment and Management of Acute Low Back Pain(AAFP)
可能性のある重大な病理学的異常は(最も多いのは骨折/外傷、癌、感染症)”レッド・フラッグ”と呼ばれている。(1~5%)

Red Flags for Acute Low Back Pain
History
Cancer
Unexplained weight loss
Immunosuppression
Prolonged use of steroids
Intravenous drug use
Urinary tract infection
Pain that is increased or unrelieved by rest
Fever
Significant trauma related to age (e.g., fall from a height or motor vehicle accident in a young patient, minor fall or heavy lifting in a potentially osteoporotic or older patient or a person with possible osteoporosis)
Bladder or bowel incontinence
Urinary retention (with overflow incontinence)

Physical examination
Saddle anesthesia
Loss of anal sphincter tone
Major motor weakness in lower extremities
Fever
Vertebral tenderness
Limited spinal range of motion
Neurologic findings persisting beyond one month

by internalmedicine | 2009-02-06 10:37 | 運動系  

女性でも心拍がリスク要因

心拍と寿命の関係をテーマにするとき

いつも思い出す、1992年発行の当時のベストセラー
 ↓
ゾウの時間 ネズミの時間―サイズの生物学 (中公新書) <amazon>

「時間は体重の1/4乗に比例する」というおおよその関係が成り立つ。心周期(心臓が打つ時間間隔)や呼吸周期のような生理現象の周期もそうだし、懐胎期間や成獣になるまでの時間、寿命のような、一生に関わる時間も、ほぼ体重の1/4乗に比例する。大きいものほど時間がかかり、体重が10倍なら時間は1.8倍長くなるという関係である。


人間という一動物種内でも同じと仮定すれば、心拍数が速いほど寿命が短い?



前向きコホート研究で、129135名の閉経後女性、平均7.8(SD 16)年 フォローアップ
主要アウトカム測定は臨床的心血管イベント

Resting heart rate as a low tech predictor of coronary events in women: prospective cohort study
BMJ 2009;338:b219
2281が心筋梗塞・冠動脈疾患死、1877名が卒中
安静時心拍と心血管イベントの多因子補正後相関評価
高安静時心拍は独立して冠動脈イベントと関連
(ハザード比 1.26, 95% 信頼区間 1.11 ~ 1.42 for 最高 [>76 拍/分] v 最低5分位 [≤62 拍/]; P=0.001)
しかし、卒中とは相関認めず

心拍と冠動脈イベントの相関は白人と他の民族群とに有意差はなく (P for interaction=0.45) 、糖尿病有無でも有意差はない (相互関係 P =0.31)
しかし、ベースライン50-64歳女性で65-79歳女性より強い相関である(相互関係 P =0.009)


安静時心拍は、自律神経系のトーンの指標であり、男性でも独立した冠動脈イベントの予測因子である(Biol Psychol 2007;74:224-42.、Am Heart J 1987;113:1489-94.J Hypertens 1997;15:3-17Am J Hypertens 2006;19:796-800)。いままで、女性ではその総監は弱いか、認められていなかった。例外としてアフリカ系アメリカ人女性のNational Health And Nutrition Examination Survey(Am Heart J. 1991 Jan;121(1 Pt 1):172-7.)だけ。

高交感神経トーンは、subclinicalな心血管疾患のマーカーとして役割を果たし、血圧、糖代謝、血清脂質のような既知のリスク要因に影響を与える可能性がある。
うつや不安が自律神経への影響(Psychosom Med 2008;70:328-37.、Eur Heart J 2008;29:1110-7.)、さらに冠動脈イベントに影響を与える(Am J Cardiol 2003;92:901-6)が、心拍解析や心血管リスクの解析がなされてなかった。


男性に比べ、心拍の影響度が一定してなかったのは、一つの可能性として、” chronotropic insufficiency”が高齢女性に多く、冠動脈イベントへの信頼性が損なわれた可能性がある。

さらに、ハザード比は最高5分位のみで増加することから、閾値仮説が生じる可能性もある。
すなわち、この文献によると、76/分という数字になる。

by internalmedicine | 2009-02-06 08:44 | 動脈硬化/循環器