2009年 06月 29日 ( 1 )

 

安定狭心症に対するインターベンション治療適応

“「なんちゃって」ステント”(http://www.asahi.com/national/update/0624/OSK200906240135.html :魚拓)とよばれる詐欺行為・・・これはやってない診療行為で診療報酬を請求するのは詐欺行為で、この報道が真実なら断罪すべき。
(富士見産婦人科問題のような事例があるから、報道をそのまま信じるわけにもいかない悲しさ ref.) 特別寄稿 捏造された「富士見産婦人科病院事件」の顛末  第一医院・院長 神津康雄

大多数のまじめな循環器医療を行っている医者にとって不幸なことで、潜在的な過剰診療があるのではないかと・・・常々疑念がもたれる分野であることはたしか。

急性冠症候群などの切迫した状況での冠動脈インターベンション(PCI)施行に関しては議論の余地がないのかもしれない。だが、ある報告では、
米国に比べ日本の対象施設ではより積極的に経皮的冠動脈形成術を中心としたハイテク治療が実施されており、日米両国においてハイテク治療は患者のクオリティー・オブ・ライフ(死亡率と再入院率の減少)の向上に大きな役割を果たしている一方、医療支出増加への影響が大きいことが示された。(pdf)と日本のPCI偏重を問題視する。



さらに、PCI適応に関して、安定狭心症には、さらに、問題点が深まる。

安定狭心症の管理アンケート結果からみた日本の特殊性 2007-11-29で、事例での医師態度をみると、やはり日本の“PCI”偏重がある。

日本の”冠動脈疾患インターベンション治療の適応ガイドライン”(http://www.jhf.or.jp/a&s_info/guideline/kandomyaku.html)の要旨には、”適応”と思われる項目が記載されていない。ただ単に、安全性・合併症・成績・経費の説明だけなのである。・・・この記載で済ました人たちの見識に疑問を感じざる得ない!・・・他の医療従事者や一般の人に疑念を抱くのも当たり前だと思う(怒りに満ちて・・・)。




別に目新しいトライアルがあったわけではないが、自分なりに、慢性安定狭心症についての治療、まとめてみた。

COURAGE トライアルではPCIは確かに症状の急激な改善効果をもたらした、機能試験もその根拠の裏打ちをした。だが、同時に、”"PCI-first" strategy for stable coronary artery disease”への批判にもつながっている。

Weintraub らの(2008年8月14日のNEJM論文:Weintraub WS, Spertus JA, Kolm P, et al. Effect of PCI on quality of life in patients with stable coronary disease. N Engl J Med 2008;359:677-687.):Clinical Outcomes Utilizing Revascularization and Aggressive Drug Evaluation (COURAGE) トライアル

PCIの効果を薬物治療単独と比較し、安定狭心症へのQoLについての比較をおこなったもの



Seattle Angina Questionnaire (SAQ)や他の測定項目は健康状態の治療効果評価に用いられ、著者らはPCIに小さいが、有意なベネフィット増加を認めることを示した。しかし、その効果も、36ヶ月後に消失した。、35539名スクリーンして2あずか2287名のみの検討という変な特性、性別偏在、薬剤を無料提供しているというバイアスなどこの研究結果に議論がある。



女性を28%含むリアルワールドに近い検討でも、COURAGEコホートと同様の結果という報告(Beltrame et al. 359 (21): 2289, Nov. 20, 2008



安定冠動脈疾患へのPCIベース戦略と保存的薬物治療比較メタアナリシスでは、前者の長期生存予後について優位性が示されている。
CLINICAL RESEARCH: INTERVENTIONAL CARDIOLOGY
A Meta-Analysis of 17 Randomized Trials of a Percutaneous Coronary Intervention-Based Strategy in Patients With Stable Coronary Artery Disease
J Am Coll Cardiol, 2008; 52:894-904, doi:10.1016/j.jacc.2008.05.051


2004年慢性安定狭心症へのCABGとPCI適応のガイドライン
Indications for Coronary Artery Bypass Surgery and Percutaneous Coronary Intervention in Chronic Stable Angina
Review of the Evidence and Methodological Considerations
(Circulation. 2003;108:2439.)
Summary of Considerations for Myocardial Revascularization for Chronic Stable Angina Based on Currently Available Evidence
CABG Surgery Versus Medical Therapy
1. Mortality benefits of CABG surgery are proportional to baseline patient risk.
2. CABG surgery does not reduce the overall incidence of nonfatal myocardial infarction.
3. CABG is effective for symptom improvement.


Balloon Angioplasty Versus Medical Therapy
1. Balloon angioplasty is indicated for symptom improvement but not merely for the presence of an anatomic stenosis.
2. Balloon angioplasty does not prevent death or myocardial infarction.
3. Balloon angioplasty is associated with a greater need for subsequent CABG surgery.


Stents Versus Balloon Angioplasty
1. Stents are indicated for the treatment of arterial dissections with abrupt or threatened vessel closure after balloon angioplasty.
2. Stents decrease rates of angiographic restenosis repeat procedures but not those of death or myocardial infarction.


PCI Versus CABG
1. CABG surgery is likely preferred for high-risk patients such as those with left main, severe 3-vessel, or diffuse disease, severe ventricular dysfunction, or diabetes mellitus.
2. Both PCI and CABG provide good symptom relief.
3. Repeat procedures are required more frequently after PCI
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そもそも、虚血性心疾患死亡率が圧倒的に少ない日本(http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/2120.html)である。・・・その施行適応が、天地神明に誓って正しく行われているという施設だけ残り、症例の集約化がなされてほしいと、願う。そして、”PTCAカテーテル日本15万円、米国2万5000円。ペースメーカー日本127万円、米国62万円。骨折治療用ボルト日本7万円、米国4万円”という膨大な日米価格差!・・・この差額を解消し、その差額を、まじめにやっている医療機関・医師たちのペイにすべきだろう。

日本心血管インターベンション治療学会専門医の上限数を制限するという報道(http://www.asahi.com/science/update/0626/TKY200906250397.html、魚拓)がなされた。で、これで解決かというと、日本の法曹界によりもたらされた新たなリスク、すなわち、同じ診療報酬で期待に応じられなかったという罰だけ被る資格になり得る。そして、地域偏在性の問題がさらに顕在化することになるだろう。・・・PCIを医療制度の中でどうさばいていくか・・・日本の医療制度作りの上で重要な話である。・・・他分野のごとく、現場をしらない官僚や政治家・経団連・市民団体が雑音を発してさらなる窮地に・・・という事にならなければよいが・・・

by internalmedicine | 2009-06-29 09:09 | 動脈硬化/循環器