2010年 04月 22日 ( 4 )

 

COPDとうっ血性心不全:ベータ遮断剤種類による効果と呼吸機能への影響

うっ血性心不全とCOPDの合併というのは、高齢化とともに、よく遭遇する事態である。
carvedilol(アーチスト)を処方するときに躊躇するわけだが・・・次第に、その使用方法に対し、肯定的となってきている。


COPD患者でもβ遮断剤使用躊躇してはいけない?  2008-03-27

COPD患者における心保護的β遮断剤使用  2008-09-17


さらに、薬剤種類での違いについて・・・carvedilolはFEV1低下をもたらすが、やはり、BNP値改善効果は最大のようだ。

Differences Between Beta-Blockers in Patients With Chronic Heart Failure and Chronic Obstructive Pulmonary Disease
A Randomized Crossover Trial
J Am Coll Cardiol, 2010; 55:1780-1787, doi:10.1016/j.jacc.2010.01.024

2つのオーストラリア教育病院のランダム化オープンラベル、3群交叉トライアル(51名のうっ血性心不全治療)

61名、66 ± 12歳
NYHA分類  I (n = 6)、 II (n = 29)、III (n = 16)
左室駆出率 37 ± 10%
35名でCOPD合併

NT-pro-hormone BNPペプチドは有意に metoprolol or bisoprololよりcarvedilolで低下
(mean: carvedilol 1,001 [95% confidence interval (CI): 633 to 1,367] ng/l; metoprolol 1,371 [95% CI: 778 to 1,964] ng/l; bisoprolol 1,349 [95% CI: 782 to 1,916] ng/l; p < 0.01)し、初回のβ遮断剤へ戻した場合ベースラインへ回帰

Central augmented pressure(pulsatile afterload)は、carvedilol で最小(carvedilol 9.9 [95% CI: 7.7 to 12.2] mm Hg; metoprolol 11.5 [95% CI: 9.3 to 13.8] mm Hg; bisoprolol 12.2 [95% CI: 9.6 to 14.7] mm Hg; p < 0.05)

COPD患者で、FEV1は carvedilolで最小で、bisoprololで最大 (carvedilol 1.85 [95% CI: 1.67 to 2.03] l/s; metoprolol 1.94 [95% CI: 1.73 to 2.14] l/s; bisoprolol 2.0 [95% CI: 1.79 to 2.22] l/s; p < 0.001)

NYHA機能分類、六分間歩行距離、左室駆出率は変化なし

β遮断剤変更に関して耐用性有り



FEV1の1.85Lと2.0Lの差というのはさほど問題にならないが、500mlと650mlだと問題になると思う。このケースは心不全はある程度重症だが、COPDとしては軽度の症例での検討である。


BNP値とFEV1の・・・・まさにリスク・ベネフィット・・・このトライアル、臨床的アウトカムで比較してないのが残念


AugP



bisoprolol :メインテート
metoprolol : セロケン 、ロプレソール錠

by internalmedicine | 2010-04-22 14:22 | 呼吸器系  

減塩:アメリカ医学研究所が食品関連企業への厳格な塩分制限を助言

大方の予想通り、US Institute of Medicine (IOM)はFDAに、より厳格な食品産業、レストランや書品サービス産業へのスタンダードを助言したという話(ソース:http://www.theheart.org/article/1068389.do#bib_1

The US Institute of Medicine(IOM):アメリカ医学研究所 は公的機関の報告文書を作成する機関であり、それ相応の政治的影響を与えると思うのだが・・・

Henney JE, Taylor CL, and Boon CS, eds. Institute of Medicine. Strategies to Reduce Sodium Intake in the United States; Washington, DC: National Academies Press, 2010.
http://www.nap.edu/catalog.php?record_id=12818

heartwireで議論が・・・
http://www.theheart.org/article/1042623.do

一筋縄ではいかないようで、AHAのおえらいさんも、減塩運動には賛成だが、政府がなんらかの手をうたないと、医師たちは協力しようにもできないとけん制

そして、業界団体からのロビイストたちの反論も・・・

by internalmedicine | 2010-04-22 10:33 | 動脈硬化/循環器  

スターシス・ファスティック:糖代謝異常症における糖尿病発生抑制効果なし

IGT患者において、5年程度の経過で、インスリン速効型インスリン分泌促進であるnateglinideは糖尿病発症頻度に影響を与えない。Nateglinideはまた、心血管リスク減少をもたらさなかった。
ゆえに、IGTマネージメントに使用するには不適切という話


Effect of Nateglinide on the Incidence of Diabetes and Cardiovascular Events
The NAVIGATOR Study Group
NEJM Vol. 362:(16) 1463-1476 April 22, 2010

2×2区分トライアル(プラセボに負けたValsartan・・・NAVIGATOR研究・・・ 2010-04-22 09:23 )の片割れ

身体運動を増やし、体重を減らすことなどのライフスタイル介入により糖尿病リスクは減少し、薬剤として、metformin、 acarbose、 rosiglitazoneも減少させるが、心血管アウトカムまで影響をあたえるという報告はない。糖代謝異常では、2型糖尿病と心血管疾患のリスク増加はあるが、結果、糖尿病と、心血管疾患へ影響を与えるはずなのだが、やはり、latent timeの問題があるのだろう。
空腹時血統より食後血糖値が心血管疾患に影響をあたえるだろうという知見(Lancet 1999;354:617-621

まずは、糖尿病発症の頻度を減少させることを示してから・・・という話になるのだが、その俎上にものらなかった。



あらためて、IGTに関するアカルボースの報告(STOP-NIDDM研究)を見るとなんだかなぁ・・・と思う

αGIであるacarboseによる食後血糖低下で、IGT患者の心筋梗塞リスクを減少させたという報告(JAMA 2003;290:486-494.)がある。



今思うと、突出した報告が・・・

2型糖尿病治療薬として、外国のガイドラインでは無視されるほど評価の低い薬剤であるαGIにIGTにおけるCVDイベント減少効果があるほどの力があることになる。


スターシス・ファスティック:糖代謝異常症における糖尿病発生抑制効果なし_a0007242_108599.gif

((The Lancet, Volume 359, Issue 9323, Pages 2072 - 2077

あらためてこの図譜をみると、CVDイベントは一年後に集中的に発生していることになる・・・IGT患者の糖尿病発症という次元を超えて・・・直接動脈硬化関連イベントが発症していることになる!


これって信用できるの?

糖尿病専門医師たちの講演を多く聴いたが、その矛盾(あるいは、アカルボースの直接動脈硬化イベント抑制作用という新発見!)にはだれも触れていなかった!・・・食後血糖の重要性という話でごまかして、この論文を掘り下げようとしてなかったかのように見える。

参照:Voglibose Ph-3 Study: ベイスンのIGTからの糖尿病発症抑制効果 2009-04-24

by internalmedicine | 2010-04-22 10:15 | 糖尿病・肥満  

プラセボに負けたValsartan・・・NAVIGATOR研究・・・

なにかと話題になる Valsartanの治験・・・最近はもっぱらそのトライアルの信頼性の問題に話題が集中しているようだが・・・完璧なトライアルは存在しない以上、議論があることは健全な証、議論を封じ込めようとするなら、その態度の方が問題で・・・

NAVIGATOR Study は、”2-by-2 factorial design”で、” valsartan (up to 160 mg daily) or placebo (and nateglinide or placebo) ”という信じがたい比較である。

なんと、Valsartanは心血管イベントにおいて、プラセボに勝てなかったという・・・驚くべき事実

・・・って、書くと、まぁ、センセーショナルになるのだが、考えてみれば、
もともと、糖代謝異常を有する患者は2型糖尿病とCVDのリスクを有し、糖尿病頻度減少と、それによる死亡および合併症減少をはかるのが研究の目的。ライフスタイル修正により糖尿病リスク減少の報告もなされているが、心血管疾患アウトカムに関してはその評価が未だなされていない。また、特定薬剤のメトフォルミン、アカルボース、rosiglitazoneなども糖尿病減少をもたらすようだが、アウトカムに関してもなかなかその結果が出されてない(論文の序文から引用)。

要するに、たった5年前後程度で、いまだ臨床的アウトカムにまで影響を与える介入方法をまだ人類は見いだしていないのである。


この研究の、” impaired glucose tolerance and established cardiovascular disease or cardiovascular risk factors”ということで、心血管リスク要因として何らかのリスクを有する患者がほとんどで98%、心血管疾患既往24-25%程度という比較的リスクのある人たちである。
トライアルはこのpopulationならイベントに差が出ると思ってたのだろうが・・・そうは問屋がおろさなかった。

Diabetes Reduction Assessment with Ramipril and Rosiglitazone Medication (DREAM) study (ClinicalTrials.gov number, NCT00095654 [ClinicalTrials.gov] )でも、Ramiprilでも、多少食後血糖に影響を与えたが、糖尿病頻度を変えなかったのに、無謀なことをしたものだ・・・

Effect of Valsartan on the Incidence of Diabetes and Cardiovascular Events
The NAVIGATOR Study Group
N Engl. J Med. Vol. 362:(16) 1477-1490 Apr. 22,2010


プラセボに負けたValsartan・・・NAVIGATOR研究・・・_a0007242_9292017.gif



プラセボに負けた理由は、ライフスタイルによって修飾されたためという苦しい弁明がおもしろい論文

私の”今年の最も苦しい弁解論文”としてノミネートされたw

by internalmedicine | 2010-04-22 09:23 | 動脈硬化/循環器