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アルコール性肝炎:特に治療戦略

心理療法にエビデンスがないというのはショッキングだった。重症アルコール性肝炎は、スコアにより、その治療戦略が明確化されている。・・・この周知が必要となろう。

そして、以下の記事の中核薬剤の一つである、トレンタール(pentoxifylline)は有効性が確認できないということで、回収・販売終了してしまった薬剤・・・日本で再販売されるにはまた時間がかかることだろう。


Alcoholic Hepatitis
N Engl J Med. Vol. 360:(26) 2758-2769 Jun. 25, 2009
アルコール性肝炎の診断は、重度アルコール飲用、黄疸、他の原因除外にて診断される。肝生検は価値ある診断手段だが、予後や以前の飲酒・断酒のタイムラインを確定するのには役立たない。断酒は回復のコーナーストーンであり、栄養不良の患者はカロリーと蛋白サポートをしなければならない。
重症のアルコール性肝炎患者(Maddrey's discriminant function, ≥32; or MELD score, ≥21) で敗血症のない患者は、40mg/日28日間プレドニゾロントライアルを投与すべき
プレドニゾロン治療七日後、Lilleスコア0.45超の患者はcorticosteroid治療継続に反応しないはずで、pentoxifylline治療に早期にスイッチする。
医師がステロイド治療に積極的でない場合などの臨床状況において使用されるpentoxifyllineは肝腎症候群予防のために有用である。
pentoxifyllineとコルチコステロイド併用の有効性は研究がなされてなく、RCTが必要な状況である。
短期生存率が90%のような重症でないアルコール性肝炎患者では、コルチコステロイド治療すべきでない。全身性感染合併症のリスクがベネフィットを上回るためである。
結果的には、薬品治療で反応しない場合は、注意深く対象を厳選して肝移植の良質な研究が必要となるだろう。


Maddrey’s Discriminant Function for Alcoholic Hepatitis
http://www.mdcalc.com/maddreys-discriminant-function-for-alcoholic-hepatitis

MELD Score and 90-Day Mortality Rate for Alcoholic Hepatitis
http://www.mayoclinic.org/meld/mayomodel7.html


Lille score:
http://www.lillemodel.com/score.asp



治療のエビデンスのまとめ
心理療法:No clear evidence of benefit in patients with alcoholic liver disease;has not been studies in patients with alcoholic hepatitis

コルチコステロイド:40mg of prednisolone orally, onece a day for up to 28days
Reduced short-term mortality in selected patients with severe alcoholic hepatitis

Pentoxifylline: 400 mg orally, three times daily
Improves in-hospital survival in patients with severe alcoholic hepatitis, fever instances of the hepatorenal syndrome in group receiving pentoxifylline

Infliximab, Etanercept;感染・死亡リスク増加

栄養支持:35-40 kcal/kgBW/日(蛋白1.2-1.5g/kg/日を含む)
Improves nutritional status but does not improve short-term survival in patients with severe alcoholic hepatitis

Oxandrolone、Vitamin E、Silymarin(milk thistle extract):重症アルコール性肝炎の生存率改善せず

by internalmedicine | 2009-06-25 10:03 | 消化器  

骨太指針への日医コメントにみる、与党の開業医いじめの本気度

「医療の効率化」=「診療所・開業医の排除」という世論形成を行いつつある。


産経新聞(背後の財務省・厚労省記者クラブ・経団連)の意見(産経新聞岩崎氏の妄言・暴言  2009-06-15)のように、”開業医は週休2.5日、時間外診療も往診もほとんどせずに、高報酬”なら良いのだが、日曜当番・時間外輪番・休日時間外診療所などの主役は開業医である。“ロビイスト”と決めつけ、”経団連側のロビイスト”の言いなりに医療体制をさらに崩壊させようとする、政府・財務省・厚労省・経団連・メディアのスクラムとポピュリズムの権化のような厚労大臣の現場無視の朝令暮改の感染症対策。

国は、全国各地で、発熱外来を廃止する方向のようである。新型インフルエンザは一般医療機関での対応が主となっている。ただでさえ、手間や人手のかかる感染症対策を国は一般医療機関にこともなげに押しつけているのである。


今後の新型・季節型を含めたインフルエンザ対策どうするつもりなのだろう?

ワクチン発注をそろそろ決めなければいけない頃なのに、現場にその方針を伝えてない。
・季節型ワクチン供給量減だけが伝えられ、例年の確保ができないという・・・となると、誰を優先に季節型ワクチンを勧めるべきなのか?
・新型インフルエンザワクチンは基本2回接種なのだろうか?そうなると、国の何万人分確保というのは、実質は半減することとなる。
厚生労働省は9日、新型インフルエンザのワクチンについて、年内に最大約2500万人分を確保できるとの試算を明らかにした。製造ラインを新型に振り向けるため、季節性インフルエンザのワクチンは、08年の約8割にあたる約4000万人分確保した段階で製造を打ち切ることになるという。(http://mainichi.jp/select/science/news/20090610ddm003040057000c.html)


現場には・・・知らしむべからず、寄らしむべからず・・・という徹底した行政側の態度

ワクチン接種にしろ、早期の急性気道感染症への対応の主役は、多分に開業医なのである。その主役たちに情報も金も与えず、ムチだけ与える・・・恐ろしい政治である。

わけのわからない“骨太”指針への、日医のコメントを見ると与党は徹底した開業医たたきを続ける予定らしい、病院へあつくと言いながら、”介護職員への給与アップ”といってた介護保険の今年の改訂は実質減だったことを見ると病院もおそらく同様となるだろう・・・・・


社団法人 日本医師会 定例記者会見(2009 年6 月24 日)12009 年6 月24 日
「経済財政改革の基本方針2009~安心・活力・責任~」の閣議決定を受けて

社団法人 日本医師会2009 年6 月23 日、「基本方針2009」が閣議決定された。

議論の過程では、社会保障費削減の撤回に向け、厚生労働関係の国会議員の先生方を中心に多大なるご尽力を頂いた。その結果、「社会保障の必要な修復をする」方針が追加された。このことをまず感謝したい。

しかしながら、「基本方針2009」には、「『基本方針2006』等を踏まえ」という表現が残っている。一部では、「社会保障費抑制を撤回」とも報道されているが、社会保障にほころびをもたらし、地域医療を崩壊させて国民を不安におとしいれた「基本方針2006」が否定されない限り、完全な撤回とはいえない。政府が「基本方針2006」を反省していないことに大きく失望するとともに、政府の危機感の欠如を指摘せざるを得ない。


「基本方針2009」には、「昨年度とは異なる概算要求基準を設定」するとある。これを受けて概算要求基準(シーリング)では、2,200 億円という明確な数字は示されず、自然増については容認されるかもしれない。しかし、「無駄の排除など歳出改革を継続しつつ」と併記されていることから、医療崩壊を修復するために必要な財源は、来年度予算でも財政中立により抑制されるのではないかと危惧される。

たとえば、「基本方針2009」別紙1 にも「医療の効率化を進める」とあり、必要な医療が無駄として排除される懸念がある。また同じ別紙1 には「『選択と集中』の考え方に基づき、診療報酬の配分の見直しを行う」とある。財政制度等社団法人 日本医師会 定例記者会見(2009 年6 月24 日)2審議会の「平成22 年度予算編成の基本的考え方について」(6 月3 日)も、診療報酬が診療所に偏っている現状を見直し、病院を手厚くする必要があると述べているが、こうした財政中立の下での配分は、断じて容認できない。


来月早々には、概算要求基準が閣議了解される。日本医師会は、地域医療を修復するための財源が確保されるよう要求し、年末の予算編成まで厳しく追求していく。医療再生、それは、国民が身近で安心して医療を受けることができる社会を保障することである。そのためには、対症療法的な財源手当ではまったく不足である。日本医師会は、今後も「基本方針2006」、すなわち社会保障費の削減について明確な撤回を求めていく。そして地域医療全体の底上げを図り、国民の安心と安全を守るため、強力に行動していく所存である。
社団法人 日本医師会 定例記者会見(2009 年6 月24 日)



度重なる、現場無視の経団連利益主導政治に対して不信を抱いているのは私ら末端の開業医だけでなく、医師会幹部もそうなのだろう。

日医が主導的に、行政のために強制協力されている事業、学校医・検診業務・産業医・地域公衆衛生事業・休日時間外診療割り当て業務など・・・なにかしらの不協力という意思表示も考慮すべき時機に至っているのかもしれない。
これらの奉仕的事業協力を放棄すれば、産経新聞記者たちが考えている、仮想的”開業医の実態”に近くなるのかも・・・



これに荷担する製薬会社があったとは・・・・この会社のお偉いさんのご尊顔
   ↓


このひと、6月24日に辞任している・・・すなわち、昨日付で・・・なんと逃げ足の速い・・・
http://www.astellas.com/jp/ir/stock_bond/pdf/ncsm4.pdf


与党の”開業医いじめ”推進の旗頭:医療政策機構
http://www.healthpolicy-institute.org/ja/outline/counselor/index.php

アンチ医者・アンチ開業医のホープ、藤村氏のお友達企業ということですね。

・”診療所機能を廃絶させること=”効率化”という言い換えで、”病院機能を集約
・医師の業務を制限して、看護師などに”業務分担”させるという美名で、開業医の役割を破綻させようとする悪巧み

すなわち、開業医を敵に回したい企業=アステラス ということになります。

みなさん、どう対処されますか? ・・・ 同種の多い新薬・“ミコンビ”が出たようですが・・・

鳥集 徹、大熊 由紀子氏などの名前もある・・・どれだけ偏った集団!
黒川清や西室 泰三(東芝)など毎度おなじみに地方医療崩壊推進者たちの名前も・・・

by internalmedicine | 2009-06-25 08:48 | くそ役人  

高齢者の社会的活動と運動能力低下

高齢者をみていると、近所とのふれあいや集落活動などを含め元気のある人は、身体能力も高い。だから、この報告ももっともと思う。社会の方が孤立しやすい老人たちを社会活動に導く活動は常になされるべきだと思う。地域密着性が低い都市部の老人たちにそういう機会を与えるよう社会がおもんばかるべきだろう。

だが、社会的活動性が無くなるから、身体運動が低下するのか、また、逆も考えられるのか?症例対照研究で、因果関係、causal effectについて検討するのはなかなか難しいと思う。

Association Between Late-Life Social Activity and Motor Decline in Older Adults
Arch Intern Med. 2009;169(12):1139-1146.
平均 (SD)社会的活動スコアは ベースラインで2.6(0.58)で、年齢、性、教育補正、、一般化推定公式モデルにて、全般運動機能は0.05U/年 (estimate, 0.016; 95% 信頼区間 [CI], –0.057 ~ 0.041 [P = .02])減少

社会的活動1ポイント減少毎に33%の運動機能低下と相関 (estimate, 0.016; 95% CI, 0.003 ~ 0.029 [P = .02])

全般運動機能低下ベースラインの社会的活動スコア一ポイント減少毎に約5年老け込むことと同様(age estimate, –0.003; 95% CI, –0.004 ~ –0.002 [P<.001])

さらに、運動年次衰退量は40%リスク増加と相関(ハザード比, 1.44; 95% CI, 1.30 ~ 1.60)
偶発Katz disabilityのリスク65%増加 (ハザード比, 1.65; 95% CI, 1.48 ~ 1.83)

全般運動減衰率の社会的活動関連は、後期運動・認知能力・障害・全般うつ症状・体組成・慢性医学的状況などの寄与因子補正後、人口統計的線上においてばらつきが無く不変 (estimate, 0.025; 95% CI, 0.005 ~ 0.045 [P = .01])


少々マニアックな解析の追加がこの論文には必要と思う



Theory And Methods Estimating causal effects
International Journal of Epidemiology 2002;31422-429
(pdf)

共役因子補正固定効果回帰モデル(fixed-effects modeling)と構造方程式モデリング(structural equation model:SEM)を用いて、原因の方向性確認試験を一般住民サンプルでおこなったもの
アルコール乱用はうつを起こすが、逆は真でない。 2009-03-03

by internalmedicine | 2009-06-24 11:44 | 消化器  

閉塞型・中枢型無呼吸横断的な夜間不整脈の傾向:CVEと心房細動

2911名のOutcomes of Sleep Disorders in Older Men Study の被験者対象研究

Nocturnal Arrhythmias Across a Spectrum of Obstructive and Central Sleep-Disordered Breathing in Older Men: Outcomes of Sleep Disorders in Older Men (MrOS Sleep) Study
Arch Intern Med. 2009;169(12):1147-1155.
RDI4分位増加は心房細動、CVE(complex ventricular ectopy )のオッズ増加と相関(それぞれ P values for trend, .01 、 <.001)
最高RDI 四分位は、最低四分位比較で、心房細動オッズ比増加と相関 (オッズ比 [OR], 2.15; 95% 信頼区間 [CI], 1.19-3.89) 、同様にCVEも相関 (OR, 1.43; 95% CI, 1.12-1.82)

OSA四分位増加は有意にCVE増加と相関(P value for trend, .01) だが、 AFとは相関せず

中枢型無呼吸は、心房細動と強い相関有り (OR, 2.69; 95% CI, 1.61-4.47) 、CVEでは有意な相関無し(OR, 1.27; 95% CI, 0.97-1.66)

低酸素レベルはCVEと相関(P value for trend, <.001)

低酸素四分位最上位カテゴリーは、最低四分位比較でCVEオッズ比が増加 (OR, 1.62; 95% CI, 1.23-2.14)



CVE(complex ventricular ectopy )とは、“bigeminy、 trigeminy、quadrigeminy もしくは nonsustained ventricular tachycardia”の組み合わせ(http://meeting.chestjournal.org/cgi/content/abstract/134/4/s52001


面白いことに、日本の循環器の医者はスリープ研究無視が未だに続いているようだが、いつまで無視・軽視し続けることができるか・・・興味深く見守っている・・・私

by internalmedicine | 2009-06-24 11:01 | 呼吸器系  

心電図PR間隔延長は心房細動、ペースメーカー移植、全原因死亡のリスク要因

心電図のPR間隔延長で、1度房室(AV)ブロックの症例は、PR間隔が200mSec超の時臨床上は判断し、多く遭遇する。
Chengらは、Framingham Heart Studyのデータ解析にて、正常PR間隔の人に比べ、1度房室ブロックでは有意に心房細動、ペースメーカー移植、死亡のリスクが増加が示された。

Long-term Outcomes in Individuals With Prolonged PR Interval or First-Degree Atrioventricular Block
JAMA. 2009;301(24):2571-2577. PR間隔200mSec超の場合
1万人年頻度
心房細動: 140 (95% confidence interval [CI], 95-208) vs 36 (95% CI, 32-39)
ペースメーカー移植術:59 (95% CI, 40-87) vs 6 (95% CI, 5-7)
全原因死亡:334 (95% CI, 260-428) vs 129 (95% CI, 123-135)



相応する絶対リスク増加は心房細動1.04%、ペースメーカー移植術0.53%、全原因死亡率2.05%

多変量解析にて、PR20mSec増加毎に、補正ハザード、心房細動 1.11 (95% CI, 1.02-1.22; P = .02)、ペースメーカー移植術1.22 (95% CI, 1.14-1.30; P < .001)、全原因死亡率 1.08 (95% CI, 1.02-1.13; P = .005)
1度房室ブロックは2倍(HR, 2.06; 95% CI, 1.36-3.12; P < .001),の心房細動、3倍(HR, 2.89; 95% CI, 1.83-4.57; P < .001のペースメーカー移植術、1.4倍(HR, 1.44, 95% CI, 1.09-1.91; P = .01)の全原因死亡リスク増加となる。

by internalmedicine | 2009-06-24 10:30 | 動脈硬化/循環器  

前兆片頭痛女性とMRI小脳梗塞病変の関係

片頭痛発作がMRIスキャンにおける小脳の病理的変化と相関する可能性があり、アイスランドのReykjark居住の population-baseの研究でScherらは、中年での毎月の片頭痛症状報告例でMRI上の梗塞様病変("infarcts")のリスクが増加するか平均25年にわたり検討


中年時月1回以上頭痛を有しなかった人と比較して、auraを有すると報告頭痛女性ではMRI上の脳梗塞所見の頻度が増加していた。

Migraine Headache in Middle Age and Late-Life Brain Infarcts
JAMA. 2009;301(24):2563-2570.



Later-Life Brain Lesions Found in Migraine-Prone Women(Medpage)に解説

前兆を有する片頭痛報告女性では、同様の頭痛を有しない女性に比べ、後年、1.9倍(95% CI 1.4 ~ 2.6、梗塞様小脳病変を有する。

女性中年前兆片頭痛では後年小脳血管疾患と関連する。
頭痛発症前に神経学的前兆症状を経験した片頭痛の約1/3が一過性の視力異常や他の感覚、aphasic、運動障害を示すと著者ら
最近の研究では前兆を有する片頭痛は臨床的な卒中や冠動脈疾患のリスク増加と相関するとScherらはのべ、片頭痛と血管病変の関連について焦点をむけた。
片頭痛と後年梗塞(組織学的死亡)の関連を4689名のアイスランドのReyjavikの男女で調べ、被験者は1967年片頭痛症状についてインタビュー開始し平均年齢は51歳であった。フォローアップインタービューを26年超行い、2002年から2006年行い、頭部MRIスキャンを行った。
梗塞様病変は男性39.3%、女性24.6%に見られ、年齢、性、フォローアップ時間補正し、月1回以上の頭痛報告してない対照(n=3243)と比較して、前兆有り中年片頭痛(n-361)で後年の梗塞様病変リスク増加あり (補正化 OR 1.4, 95% CI 1.1 ~ 1.8)。特異的な差異は女性の小脳病変と相関反映。
前兆有り片頭痛女性の内、23%が脳病変の所見あり、頭痛無しの例では14.5%(OR 1.9, 95% CI, 1.4 ~ 2.6)

リスク増加は中年・後年の心血管リスク要素と独立しており、男性においては病変における片頭痛関連相違を認めなかった。
著者らは、片頭痛と脳病変の関連の説明として、伝統的心血管リスク要因を含め、血管内機能障害を提案しているが、片頭痛関連病変が小脳や女性に特に存在するかの説明にはならない。
全長を伴う片頭痛は臨床的あるいは無症候(presumed)虚血性卒中と関連するか?
片頭痛の人は小脳への脆弱性が示唆されている報告があり、無症候性脳梗塞の尤度が小脳で高いことが以前の研究からも示されている。
この研究二次解析で前兆を伴う片頭痛と特定のサブグループでの皮質梗塞の関連が示唆された。
著者らは、梗塞様病変の臨床的重要性を評価して織らず、関連する兆候を有するかどうか検討されていないと強調している。梗塞様病変の臨床的関与は未だ確立しておらず、今後の検討が必要としている。

エディトリアルでは、 Tobias KurthやChristophe Tzourioが、片頭痛と病変の関連についての結論に対して警告を与えている。梗塞様病変(infarct-like lesion)の原因・性状がなく、臨床症状やその後の症状がない場合がある以上、片頭痛が脳に悪影響があると結論づけるのは時期尚早と疑問をなげかける意見がある。

一方、Scherらの発見に対して、構造的脳の変化や機能的変化を伴う片頭痛を調査する新しい研究はその関連の理解を深めるのに役立ち、今後片頭痛に関する特異的メカニズムが判明する可能性に期待がかかっている。


以前より検討されていたことのようだ・・・(私も聞いたことがある上述の報告)
最近、片頭痛が将来脳梗塞の危険因子であるか否か、すなわち「片頭痛は脳梗塞の危険因子か?」について大きな議論を呼んでいる。30~60歳の片頭痛患者を対象とした頭部MRIを用いた無症候性を含む脳病変(梗塞)の横断的有病率調査が行われて、全脳病変の有病率は片頭痛群と対照群に差はなかったが、脳後部循環領域では片頭痛群が対照群に比し有意に有病率が高く、特に前兆の片頭痛群で高かったと報告されている。さらにこの所見は特に小脳、しかも各灌流動脈の分水嶺領域に顕著であることまた脳幹、特に橋に目立つことも報告されている。 さらに片頭痛患者の脳梗塞の発症危険度を多数の調査に対する系統的レビューとそのメタアナリシスが行われている。この分析では脳梗塞発症の相対危険度は片頭痛全体で2.16、前兆のある片頭痛で2.27、前兆のない片頭痛で1.83、さらに片頭痛で経口避妊薬使用者は8.72と報告されている。 
さらに片頭痛患者における心血管イベントの危険因子に関する調査では、片頭痛群特に前兆のある片頭痛群では、高コレステロール、高血圧、冠動脈疾患および脳血管障害の早期発症率が有意に高く、心血管イベントの発生危険度が片頭痛を有さない対照群よりも高いことが明らかになっている。

http://neurol.med.tottori-u.ac.jp/JHS34/luncheon.pdf
 ↑
卵円孔開存(PFO)との関連にも言及している。

by internalmedicine | 2009-06-24 10:14 | 運動系  

膵癌におけるBMIと生存・発症年齢リスク

膵癌はUSではガン関連死順位としては四番目。過体重・肥満の頻度は20年で急激に増加し、体重増加と膵癌の関連に関するエビデンスが累積してきた。しかしながら、生涯にわたる体重超過と膵癌リスク、体重変化を生じた年齢におけるリスクについて検討された報告はなかった。そのため、体重超過は膵癌のリスク要因であり、生涯のBMIと膵癌リスク、癌発症、包括的生存率に関してその相関を検討。

Liらは、841名の膵管腺癌症例と754健康成人を含む入院ベースの症例対照研究にて糖尿病状態と独立して若年成人時の過体重と肥満は膵癌リスク増加と関連し、診断年齢の若さと相関した。疾患病期や切除状態と独立して、高齢時や診断直前の肥満は包括的生存率減少と関連する



Body Mass Index and Risk, Age of Onset, and Survival in Patients With Pancreatic Cancer
JAMA. 2009;301(24):2553-2562.


エディトリアルにて、McWilliamsとPetersonは、膵癌予防と治療の相関に関する意味合いを議論している。

関連:Eurekaltert

by internalmedicine | 2009-06-24 08:49 | がん  

虫垂炎診断は尿バイオマーカーで可能となるか?

確認が取れず
 ↓
Annals of Emergency Medicine 6月23日に報告
(情報ソース:http://www.eurekalert.org/pub_releases/2009-06/chb-aut061709.php)


虫垂炎の診断のバイオマーカー?
画像診断発展にかかわらず、3-30%の不必要な手術がなされているという報告もあり、方や30-45%は診断時すでに虫垂破裂という報告もある。
虫垂炎診断バイオマーカーは今のところ無かったのだが、 mass spectrometryを用い、検討。
虫垂炎患者の6名から12の尿検体を用い、32のバイオマーカー候補検討し、さらに他の遺伝子発現研究からの候補もいれ57で合計検討。
18ヶ月間虫垂炎疑い67名の子供で、25名が最終的に虫垂炎と判明
7つの候補尿中バイオマーカーを同定し、もっとも優秀なのが、leucine-rich alpha-2-glycoprotein (LRG)で、AUC値0.97で、ほぼパーフェクト偽陽性無し・偽陰性無し

LRGは、画像上正常でも虫垂炎で増加し、LRGの量は組織学的判断の重症度と相関

immunoblottingによる尿LRG増加同定にて、urine dipstickのようなものが検討されても良いかも?

by internalmedicine | 2009-06-23 16:55 | 消化器  

VYMET研究:スタチン+ゼチーアの効果

ezetimibe+スタチン治療はもう少し評価されても良いのかもしれない。・・・だが、なにせ、薬価が未だ高すぎる

Lipid–altering efficacy and safety of ezetimibe/simvastatin versus atorvastatin in patients with hypercholesterolemia and the metabolic syndrome (from the VYMET study)
The American Journal of Cardiology
Volume 103, Issue 12, Pages 1694-1702 (15 June 2009)
メタボリックシンドローム患者は、心血管リスクが高く、強化脂質治療が必要とされる。多くの患者は脂質治療は開始量のままで、高用量に補正されていないことが多い。
高コレステロール血症+メタボリックシンドロームを有する1128名の二重盲検ランダム化、6週間研究、ezetimibe/simvastatin 10/20 mg versus atorvastatin 10 or 20 mgの脂質低下有効性評価トライアル
プライマリエンドポイントはベースラインからのLDL低下比率
追加エンドポイントは、他の脂質、リポたんぱく比、HDL、CRP、事前脂質特性の達成度
atorvastatin群に比較して、ezetimibe/simvastatinで、LDLコレステロール、非HDL、アポリポ蛋白B、lipid/lipoprotein比は有意に改善(p <0.001)
事前特異化LDL、非HDLリポたんぱくコレステロールは有意にezetimibe/simvastatin群でatorvastatinより全ての投与量比較で減少(p <0.05)
HDLはtorvastatin 10 mgよりezetimibe/simvastatin 10/20 mgで有意に低下 (p <0.05)し、atorvastatin 40 mg よりezetimibe/simvastatin 10/40 mg出て以下 (p <0.01)。
中性脂肪、VLDL、hr CRPは両治療群同様
肝臓、筋肉、消化管、肝炎、アレルギー反応・皮疹関連副事象は同様で少ない。

by internalmedicine | 2009-06-23 15:06 | 動脈硬化/循環器  

音楽は心理学的影響を凌駕する生理学的変化をもたらす:様々な疾患への治療応用可!

”音楽療法”ってのが、以前から、卒中リハビリテーションなどで応用されている。様々なリハビリテーションに応用可能なはず・・・と思う人も多かっただろう。

Dynamic Interactions Between Musical, Cardiovascular, and Cerebral Rhythms in Humans
Bernardi et al. Circulation.2009; 0: CIRCULATIONAHA.108.806174


イタリアの研究者たちは、血流・呼吸数が音楽と同期し、音楽が一日で血圧コントロール、リハビリテーションへの治療ツールとなり得ることを”Circulation"という雑誌で示した。

以前の報告(Heart. 2006 Apr;92(4):445-52)で、速いテンポの音楽の結果呼吸数、心拍、血圧の増加が見られ、音楽が止まると、呼吸数、心拍数、血圧は下がり、時に最初より低下する。よりゆったりした音楽は心拍減少をもたらすということを見いだした。

この発見を発展させて、研究者たちは、crescendoに盛り上げると、やや感情的な高ぶりを示し、decrescendoにいたるとrelaxationを示す。
音楽のcrescendoは次第にボリュームを上げて、decrescendはボリュームを下げるという介入をした。音楽により持続的、ダイナミックに、時により広がりを見せて、心血管系への変化をもたらす。情緒により心血管系に変化をもたらすばかりでなく、反対に、心血管系の変化が情緒に影響をあたえる、2方向性の可能性があると著者ら。

被験者は、年齢・性別をマッチさせた24名の健康白人で、12名は実績あるシンガー(9名女性)で、12名は音楽トレーニング未経験の被験者(7名女性)で24-26歳女性。

ヘッドフォーンをフィットさせ、心電図(ECG)、血圧、脳動脈血流、呼吸、皮下血管の縮まりのモニターを行った。

クラシックミュージックの5つのランダムトラック(Beethoven’s Ninth Symphony; an aria from Puccini’s Turandot; a Bach cantata (BMW 169); Va Pensiero from Nabucco; Libiam Nei Lieti Calici from La Traviata)を二分の無音時間をたもち演奏


所見としては・・・
・どのcrescendoも、皮下血管の縮まりをもたらし、血圧・心拍・呼吸振幅を増加させる。
どの音楽トラックも影響の程度は音楽の特性の変化に比例する
・無音時間において、変化は減少し、皮下血管拡張、心拍、血圧の減少顕著、音楽とちがい、無音は心拍、他の因子を減少させ、リラクセーションを意味する。
・10秒程度の音楽フレーズ、たとえば、“Va Pensiero” や “Libiam Nei Lieti Calici"で使われるような、芯パックリズムと同期するリズムで心血管コントロールに影響を与える。
・音楽特性(crescendoかdecrescendoか)は心血管系、呼吸系システムにより継続的な影響があり、音楽がオペラのような、強調だらけのとき顕著となる。


音楽をリハビリテーション医学でどのように用いることができるかを理解するための知見が増えてきた。

以前の研究からも、音楽がストレス軽減し、運動パフォーマンスを促進し、神経学的障害を有する場合にその運動スキル改善促進するという報告があり、Bernardiは音楽が様々な疾患の治療に用いられるかもしれないとし、疼痛・負荷的呼吸の閾値増加にyり運動継続を助ける効果も示している。

早いテンポ、遅いテンポの音楽(同じ曲内でもcrescendoやdecrescendoのある場合)はより効果的になる可能性がある。音楽は生理学的変化をもたらしその影響は心理的影響をも凌駕する可能性がある。自律神経機能のmodulationは身体のsensationに、意識レベルに到達するまで影響をもたらす。少なくとも上位脳機能への持続的刺激をもたらし、音楽による身体生理学的個体内同期化は"sense of sharing”を強化するのに役立つ。

これら全ては、音楽療法の有効性が卒中のような病態の治療にとどまらずリハビリテーション医学全般に広がることを意味するだろう。

この研究の限界としては、24名という被験者の少なさ、と、年齢、教育、民族性が同一であったことであり、高齢者では反応が違うだろうと思われ、音楽への態度の違いで反応が異なる可能性がある。


脳血流にも影響を与え、脳のリハビリテーションに有効かも
Dynamic Interactions Between Musical, Cardiovascular, and Cerebral Rhythms in Humans
Bernardi et al. Circulation.2009; 0: CIRCULATIONAHA.108.806174



Youtube:
Beethoven Symphony No.9 - Bernstein 1989 (part 1)
Pavarotti - Nessun Dorma - Turandot, Puccini
Bach - Organ Sinfonia from Cantata No. 169
Va Pensiero dal Nabucco di G.Verdi - Coro Città di Riccione
Verdi La Traviata Brindisi Libiam ne' lieti calici



一般の老人たちになじみのある演歌や軍歌、童謡などに、適した音楽があるだろうか?・・・あるいはなじみのない上記音楽でも同様の効果があるのだろうか?

by internalmedicine | 2009-06-23 10:04 | 運動系