人工呼吸離脱にマニュアルはそぐわない

世の中マニュアル手技で、プロトコールをつくり、なんかそれで医療費を決めるという動きのようですが、
人工呼吸でさえ、グループの経験と勘の方も、一応考えられたプロトコールに従うのと、成績がかわらないということだそうです。
これって、クリニカルパスの反証になりませんかねえ(トリビア風・・)





プロトコールに従った人工呼吸離脱の前向き研究
A Prospective, Controlled Trial of a Protocol-based Strategy to Discontinue Mechanical Ventilation

American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine Vol 169. pp. 673-678, (2004)

プロトコールに従った群:通常群
人工呼吸離脱:74.7% vs 75.2%
人工呼吸期間:60.4[28.6–167.0] vs 68.0 [27.1–169.3]時間
病院内死亡率:36.4% vs 33.1%
ICU滞在期間:115 vs 146時間
人工呼吸再挿入:10.3% vs 9.0%

# by internalmedicine | 2004-03-06 10:39 | 呼吸器系  

糖尿病女性患者で知的機能は無治療>インスリン治療>経口薬=非糖尿病の順で低下

長年、ひとりの糖尿病の患者さんをみると認知機能低下にはっとすることがあり
ます。あんなにしっかりした人だったのに・・・

#もっともこちらももともと認知機能に問題ありで・・・お互い様だというのは
棚の上においといて・・

知的機能の低下、かつ、インスリン自己注射が必要となるほどのひとがいてイン
スリン導入・維持に一苦労します。

以下の論文によると、糖尿病の治療をしない人>インスリン治療している人ほど
認知機能低下があるようで、
もともと自覚がなく、自分が病気であるという意識がないひとはますます悪化し、
認知機能低下進行し・・・これくらいになると社会的なサポートが必要だとおも
うのですが・・・
悪循環・・・です

#世の中には知的機能は高いけど逃避機制だけが非常に強い人もいますけど

日本の社会は、だいたい医療機関にまかせすぎです。社会的に、コミュニティー
として面倒見るべきものを一医療機関にまかせ、あるいは、放置し、結果的に社
会資源の無駄遣いをしてしまう。糖尿病などのコントロールを社会的に促進すれ
ば認知機能低下にともなう社会資源の無駄遣い(極端な例をあげれば、痴呆によ
りだれかが面倒見なければならなければならないのと、社会的に活動性の高く、
社会にも寄与してくれる人間を比較すれば前者は社会資源を2倍無駄にしている
わけですから)


大元の論文

Prospective study of type 2 diabetes and cognitive decline in women aged 70-81 years
BMJ 2004;328:548 (6 March)
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今までは糖尿病男性患者のみの報告であったが女性の報告であり、本来女性の方
が動脈硬化の影響が大きく、より動脈硬化からくる認知機能障害を悪化させる可
能性が今までの研究で判明していたが、今回、認知機能低下は無治療>インスリ
ン使用>経口糖尿病薬の順で影響がある


認知機能低下が糖尿病のない人に比べあるスコアで30%ほどのオッズをもって
増加し、糖尿病15年後50%にもなる。
糖尿病があるが治療をしてないものは認知機能障害がもっとも低下している。
経口治療は糖尿病無しの認知機能低下と同程度

# by internalmedicine | 2004-03-05 10:07 | 動脈硬化/循環器  

慢性閉塞性肺疾患COPDの新しい予後指標 BODE

COPDは以前から“青ぶとり”"(blue bloater:青い薫製ニシン")と“赤やせ”("pink puffer:赤いフグのような膨らみ")にわけられる。
#日本人には薫製ニシン(写真)とフグ(写真)をなぜ使うのかわけがわからない・・・

“pink pfferは無力な樽状の胸郭をしていて、口すぼめ呼吸をして、チアノーゼや浮腫は少ない。胸郭外の補助呼吸が見られ、喀痰は少なく、呼吸機能の変動は少ない。横隔膜の拡大は減少し、呼吸心音は遠い。ただし、樽状の胸は特異的ではなく老人では肺コンプライアンスが高く、残気量が増えるので普通見られる。
blue bloaterは典型的には肥満、チアノーゼ、浮腫があり、喀痰量が多い。老人のblue bloaterがすくないのは肺性心が多く、すぐ死ぬからではないか・・
なんて、COPDとなじみの深い会社のテキストには書かれております。




ところで、BODEというあたらしい指標で予後を推定した試みがあります。
やせの指標としてのBMI(B)、気道狭窄の指標(O)、呼吸困難度(D)、運動能力(E)を指標にというわけです。
MRCスケールを呼吸困難度として使ってるので、DとEがかぶるような気もするのですが・・・まあよいとしましょう。

これで予後指標を提示したうえで、呼吸苦、気道閉塞ももちろん体重をふやすのは簡単そうでCOPDでは難しいのですが、努力をうながすのにはよいかもしれません。
BODE1/4以下の群では残念ながら50%生存率35週程度です。これも事実です。

The Body-Mass Index, Airflow Obstruction, Dyspnea, and Exercise Capacity Index in Chronic Obstructive Pulmonary Disease
NEJM Volume 350:1005-1012 March 4, 2004 Number 10

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慢性閉塞性肺疾患COPDの新しい予後指標 BODE_a0007242_16564136.jpg



0-2:y = -4E-05x^2 - 0.0016x + 1.0102
回帰図

3-4:y = -0.0001x^2 + 0.0008x + 0.9837
回帰図


5-6:y = -0.2528x^2 - 0.2231x + 1.0211
回帰図

7-10:y = y = -8E-05X^2 - 0.0125x + 1.0785
回帰図

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関係ないのですが、MRCの呼吸困難度スケール0~4で記載されてます。GradeあるいはCategory5が4のようにこの論文では記載されているのですが、へんですねえ・・・
引用)
modified MRC Dyspnoea Scale for Breathlessness(http://ajrccm.atsjournals.org/cgi/content/full/161/3/886/T1
Grade 0 No breathlessness
Grade 1 激しい運動で呼吸困難
Grade 2 平地の急ぎ足やかるい坂道で息切れ
Grade 3 平地で同世代の人より歩行が遅いか、自分のペースで歩行したときに息切れで止まる
Grade 4 100ヤードを歩いた後ストップする
Grade 5 息切れのため家からでられない、着衣時にも息切れ




実は日本でよく使われる(というか、日本でしか使われない)、Hugh-Jonesの分類はもっと変です。

Hugh-Jonesの呼吸困難分類
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 Ⅰ度:同年齢の健康者と同様の労作ができ、歩行、階段の昇降も健康者並にできる。
 Ⅱ度:同年齢の健康者も同様に歩行できるが、坂、階段は健康者並にできない。
 Ⅲ度:平地さえ健康者並に歩けないが自分のペースでなら1.6km以上歩ける。
 Ⅳ度:休みながらでなければ50m以上歩けない。
 Ⅴ度:会話、着物の着脱も息切れがする。息切れのため外出ができない。
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200mしか歩けない人はどこにはいるのでしょう?
これはIII度が広すぎてつかえない指標だと一部の呼吸器専門医は以前からしてきしているのですが

<付録>
shuttle walking試験から6MDを推定する式
相関係数0.688371699
y (6MD)= 0.3491x(SWT) + 303.24

# by internalmedicine | 2004-03-04 13:50 | 呼吸器系  

抗菌グッズは無駄だから買うな・・・アメリカ医師会は使用注意を喚起

抗菌グッズは無駄だから買うなってことになるのでしょうか?

最近、マイナスイオンのないエアコンを買うのは至難の業で、こまってますが・・


巨大電機メーカーなどがやってる酸素もそんなもんです
関連URL

あれで、結局付加価値とやらをあげるそうですが、結局、価格のみ+の製造業者のための(負荷)価値のような気がします。



Effect of Antibacterial Home Cleaning and Handwashing Products on
Infectious Disease Symptoms
Annals of internal medicine 2 March 2004 Volume 140 Issue 5 | Pages 321-329
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抗菌成分を含む清掃用品あるいは個人の衛生器具の使用が普及しているが、感染
症の頻度を減らすかどうかのその効果は不明

二重盲検ランダム化トライアル

238の家庭(1178名)で、少なくともひとりの就学前子供を含む
家庭をランダムに一般清掃・ランドリー・手洗いなどにつかう商品を抗菌成分と
抗菌成分のない製品で割り当て
一週間毎に電話問い合わせ、月一回の訪問48週に三ヶ月毎インタービュー

症状は主に呼吸器症状

検討は戸別×月で
鼻漏・咳:26.2%、咽頭痛:10.2%
熱発:11%、嘔吐:2.2%、下痢:2.5%
熱感?(boils?):2.5%、結膜炎:0.77%

干渉群と対照群で差がなかった
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CDCは、耐性菌増加と抗菌剤との交叉耐性の問題、さらにアレルギーとの関係にて注意を喚起している。


<アメリカ医学会>は抗菌グッズ使用に注意を喚起している

# by internalmedicine | 2004-03-03 17:33 | 感染症